第55話

 自分ら、帰れるだろ?」


 彼は、彼女の応えも待たず、半袖カラーシャツの裾を翻して、スタスタと正面玄関へと歩いて行った……。


「……」「ママ…」「ままぁ…」


 恐らく、何時もの事なのであろう―気丈な母親は、子供達に笑い掛けつつ、彼等に提案した。


「私達も…どっか、寄ってこ?」

「うんっ!」「わーい!」

「おやつ…かな?」

「ボク、パンケーキがいい!」

「ハナちゃんは、そふとくりーむ!」

「じゃ…ハンバーガー屋さんで、いい?」

「うん!」「いい!」


 経産婦の家庭にも、彼女等なりの事情が有る…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る