第20話 【MOVIE5】コーラプール

「じゃ、行きましょうか」


俺たち5人はプールサイドに到着した。


「……なっ!?」


プールサイドにはなぜか、コーラ印のトラックが10台以上あった。


しかも、プールの水が透明じゃなくて茶色だった。


「なんで、プールの水がコーラみたいな色してんだ」


「コーラみたいじゃなくて、コーラだからに決まってんでしょ」


「……へ?」


「結人くん、コーラメントス風呂って知らないですか?」


「あー知ってる! 風呂を丸ごとコーラにしてコーラメントスやるやつか。」




「……じゃあまさか、このプールってのは」


「風呂の代わりに決まってんでしょ」




「……藍那が俺に紐付きメントスを作らせたのは」


「コーラメントスするために決まってるじゃないですか」




「……このプールが貸し切りなのは」


「動画を録るために決まってるだろう!」




「―――――はぁっ!?」




……あまりの非現実さに現実を受け入れられない。


「わー! コーラメントスプールなんて楽しみです~」




「じゃ、結人くん。ボクはカメラマンするのでカンペ係でもしてください。」


「……ああ。」


藍那からスケッチブックを手渡されてた。


「真衣ちゃんもどうぞ」


真衣にもスケッチブックが渡された。


「えっ……、はい。」


……真衣までこき使うつもりか、こいつは。


「キヌエ、お前は何すんの?」


「なんだその愚問は。録られるに決まっているではないか」


「……録られる? 録るんじゃなくて?」


そんな俺の疑問を藍那が遮る。


「今回の動画はもも様とキヌちゃんのコラボ動画なんですよ」


「コラボ?」


「ユーチューバー同士で一緒に動画を録ることをコラボと言うんです」


「じゃあまさか、キヌエ、お前は……」


「ユーチューバーだが?」


『それがどうした?』みたいな面向けてられても。


「普段はどんな動画あげてんの?」


「よくぞ、聞いてくれた。我の家はと―――――」


「カニ髪! はやくきて!」


と間切の声。


「カニ髪言うな! 小物が!」


キヌエは間切の方へ行ってしまった。




間切とキヌエは紐付きメントスを背中や腕にくっつけると、bと準備オッケーサインを出す。




【録画開始】




あーあ。こんだけのコーラとメントスがあああああ


胃がいてぇ。


俺が一生かけて食べるコーラとメントスの量でもおつりが来るだろうに。




ザボーンと、間切が先行してコーラの海へ飛び込んだ。


その瞬間。シュワーとたくさんの泡が溢れ出す。


が、入って2秒ぐらいで。


「あーこれダメ。風呂と何も変わらない。」


と間切がプールから上がってきて、俺の横でビデオカメラを構える藍那の前へ歩いてきた。


「藍那、これじゃ刺激が足んないからやめ」


「カニ髪も、それでいいでしょ?」


「まぁ、それでも我は構わんが」


「あっ、隣の『流れるプール』なんかいいんじゃない!? コーラ、あっちに入れといて」


「もも様、了解しました。」


―――――は?


「おい、間切」


「……なによ」


「お前、こんなことして何も思わないのかよ」


「思うわよ、今年の経費はこれで相当埋まるわね。」


「そういうことじゃねーよ! こんな、食べ物粗末にして何にも感じないのかよ」


「食べ物をどれほど大事に思うかなんて人の勝手じゃない」


「コーラやメントスが可哀想だろ」


「牛や豚ならまだ分かるけど、そいつらに感情なんて無いでしょ?」


「そうだけど……」


「なら、あたしの勝手でしょ」


「お前はこういうの簡単に買えるかもしれないけど、簡単に買えない人だっているんだぞ」


俺とか。


「そんなに惜しいならプールに飛び込んで飲んできたら?」


「いや、結構d―――――」


「結人くん、良かったですね! 今ならもも様のエキス付きですよ!」


「…………えっ。」


「変な想像すんなバカ!」


<ゴッ>






偉そうなこと言ったけど、俺には何の権限もないので結局、『流れるプール』にまた新たなコーラが注がれることになった。


藍那は業者の人と交渉に、間切はどっか行った。


―――――結果―――――。


俺は今、真衣とキヌエの3人でプールの休憩所に座っている。




「結人、真衣。 何か飲むか?と言ってもコーラしかないが。」


と、キヌエがコーラをくれた。


なんというか、ちょっと空気が重い。


そんな中、キヌエが会話を切り出す。


「そうだ!一気飲み勝負しよう!」


「おう、いいぜ。」


ちょうど、スカッとしたいと思ってたとこだ。


「真衣、そういうのは苦手で~。」


自信なさそうに答える真衣。そういや炭酸苦手だったような気がするな。


「大丈夫だ、真衣。我に作戦がある!」


「作戦!? ほんとですか~?」


(ゴニョゴニョ)


「準備はいいか?」


「オッケーだ(です~)」




「「「よーいどん!」」」




「おえっ(吐く)」


「いってええええ(目に入る)」


開始一秒でキヌエが俺の顔めがけてコーラを吹いてきた。


「きったねえ!(両方の意味で)」


「今だ、真衣! 飲みきってしまえ!」


「飲み終わりました~」


「くっそ!まけt―――――」


真衣を見ると、嬉しそうな顔色が一気に変わった。


「おえっ」


「いってええ」


またも、俺の眼球にコーラがクリーンヒットした。


「吐いてしまいました~」


「真衣」


とキヌエが手を差し伸べる。


「キヌエちゃん……」




「どん真衣!」




「…………は?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る