第17話 【MOVIE4】甘い思いはさせたげます

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(こもも視点)



 翌朝。



「もも様、おはようございます」

「おはよ、藍那」


 あたしは大広間のテーブルにつき、藍那に作らせたももジャムトーストを口に運ぶ。



「例の動画の撮影日、今日になりましたから」


「あれって来週の予定じゃなかった?」


「急遽、今日に変更になりました」


「あたしはそれでもいーけど、の予定は大丈夫なの?」


「大丈夫です。 には確認済みですから」


「そう。 じゃあ機材確認あんたやっといて」



「……ううっ」



 突然、目の前に座っていた藍那が腹を抑えた。



「ちょっと藍那!? 大丈夫!?」


「なんだかのこと考えたら腹の調子が……」


「……えっ」


 何その、)な症状。



「だから、代わりにもも様機材確認を……」



 バタン



 床に倒れる藍那。



「あいなああああああああ」



「ったく、仕方ないわね」



 あたしはトーストを平らげると、席を立った。





「藍那!? 生きてたの!?」



 バタン



 また、床に倒れる藍那。


 …………。


「……アホらしい」



 けど、藍那にはいつも世話になってるし、今日ぐらいあたしが肩の荷降ろさせてもいいかな。


 どうしてをあんな拒絶するのかは謎すぎるけど。



 あたしはコートを着るとエレベーターに乗り、動画で使うがある機材倉庫へ向かった。


 チーン


 扉が開く。


「……

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(結人視点)



「……ん」



 俺は目を覚ますと、背中に重みを感じた。


 背中に手を充てると


 ……藍那のやつがかけてくれたのかな。


 そう思った矢先。



 が鼻をかすめた。


 ……は。


 藍那の匂いじゃない。だ。

 このコートは間切の物だと思って間違いないだろう。


 でも、間切本人が俺にコートをかけたとは考えにくいな。

 だって、間切は俺がここに居ることを知らないし、何よりあいつは俺のことを嫌ってる。


 藍那が勝手に持ってきてかけたんだろう。


 チーン


 エレベーターのドアが開くと、藍那が姿を現した。



「おはようございます」



 ……こいつ、よくぬけぬけと!



「藍那、てめえ!」



 俺はエレベーターの中へ足を踏み入れると、

 もう逃げられないように開閉部に右手を宛てた。



「もう、逃さねーぞ!」





 なぜか、身体をぷるぷるさせる藍那。


「大胆? 何言ってんの?」


「いや、だって、じゃないですか!?」


 そういう流れってどういう流れだよ。


 藍那の言うことは時々よく分からない。


「とにかく俺はもう帰る。 すげー疲れた」


 俺は右手を離すと、エレベーターの奥へ寄りかかった。



「……お疲れ様です。ほんとに全部こなしたんですね」

「ああ」



 マージお疲れだよ。もう二度とやりたくねえ。



「これ、ありがとな」



 俺は着ているコートを脱ぐと、藍那に手渡した。


「けど、もう勝手に間切のコートはかけんなよ。 あいつにバレたらキレられそうだ」


 今回はあいつから直接借りたもんじゃないから、って理屈には当てはまらないはず。



!? ?」



「なんで? そりゃ、――――」



?」



 あっぶね。

 香水の匂いで分かったなんて言ったら、俺が普段からクンカクンカしてる変態みたいじゃん!



――――



 俺が間切のやつを好きみたいになるのは不服だが、変態と思われるよりマシだ。

 間切の奴と関わることももう無いだろうし、これでいいや。



「結人くん、やっとになったんですね!」



「……なってねーよ」



 何でちょっと嬉しそうなんだ。


「はよ、帰りたいからエレベーター動かしてくんね?」


「いいですよ」


 チーンと扉が締って、エレベーターが動き出す。

 ……なんか、


 チーン


 再び扉が開いて陽が差し込む。

 巨大ビル、マーキュリーの外に出る俺と藍那。


 冷たい風が肌に触れて心地良い。



「やっぱし、シャバの空気はうめえ!」


「……何か結人くん、犯罪者みたいですよ」




 ……この監禁魔め。


「じゃあな」


 一歩、踏み出したその時だった。







 ──は?


 まーた、こき使う気かよ。こっちはもうクタクタなんだつーの。



「待つのは勝手だけど、俺は行かねーからな」



、何だか分かりますか?」



「それは……間切に借りたウェブカメじゃん」



「結人くんがうたた寝てる間にカバンからしました」



「やっと返しといてくれる気になったのか……! あとは頼んだぜ」



「何か勘違いしてません……? ボクが言いたかったのはです」



 突然、藍那が右手を、ウェブカメを、

 そして振り下ろすように秒速で右手を降ろす。

 


 あああああああああああ!!!!!!!!!


 そういうことかよ! きったねえ。


「分かったよ! 行くから、行けばいんだろ!」



「水着と遊び道具持ってきてくださいね! あと、ちょっぴりの!」



「……



!」

――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント秘話


作者「こももの香水はジルのピーチホワイトフ◯ーラル オードトワレ」


こ「!?!?なんで知ってる!?キモイ!!」


「寝たフリする藍那かわいい」「こももの匂いクンカクンカした...しないでもない」「読者も疲れたからコート掛けられたい!!」

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どれも感謝ですが、評価、フォロー、応援の順で嬉しいです。

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