第16話 【MOVIE4】紐付きメントス

<チーン>


振り返ると、藍那の乗っているエレベーターのドアが閉まった。


「おい! 」


エレベーターの一部分がパカッと開いて、藍那が顔を出した。


「これから結人くんにはここでバ…… いや、労働をしてもらいます。」


「……は? 置き手紙はどこいった?」


「だから、言ったじゃないですか。その通りだと。」


甘い話はあるわけ無いってことか。


「……騙したのか。俺を。」


「はい。」


……はいじゃねーよ。


「何をさせる気だ」


臓器売ったり、麻薬の密売するんじゃねえよな?


「簡単な軽作業ですよ。」


……軽作業?


「具体的には、何すんだ?」


「そこにダンボールありますよね? 開けて中見てください。」


後ろに振り返って、10数個あるダンボールの一つを開けると……




大量のメントスが入っていた。




「賞味期限切れの残飯処理でもさせる気か?」


「そうして貰っても構わないですが、たぶん無理ですよ。」


「その隣の箱も開けてください」


……また、大量のメントスが入っていた。


「ここにあるダンボール、全部メントスか」


「はい。」


「こんなの、どうしろっていうんだ?」


「あとはこれに書いてあるので、頑張ってください」


藍那が二つ折りの紙をエレベーターの隙間からピタッと投げ落とした。


「じゃ、終わったら迎えに来ますから」


……は?


「ふざけんな! 俺はまだやるなんて一言も言ってな――」


<チーン>


エレベーターが上へと動き出す。


最後に見た藍那は『計画通り』とでも言わんばかりの面をしていた。


「あの、外道……!」




俺は藍那が投げ落としていった二つ折りの紙を開いた。




【どうがきかくしょ】10ページ


紐付きメントスのつくりかた。




1 メントスの中心にキリで穴を開ける


2 開いた穴にタコ糸を通す


3 穴の隙間に接着剤を流し込む




これを約3cmの間隔で行う




……紐付きメントス?


こんなもん作って、何の動画撮るんだよ。


ダンボールの上に丁度キリとタコ糸があったので、試しにやってみたら『紐付きメントス』は意外と簡単に出来た。




……が。


正直、すぐ飽きた。


「こんなチマチマしたこと、いつまでもやってられっかよ。」


「俺はもう、こっから出る!」


――脱獄だ。


部屋を全面見渡したが、階段などは一切見当たらなかった。


俺は乗ってきたエレベーターに視線を戻す。


「やっぱし、こいつに乗るしかねーか。」


エレベータのボタンの上には透明なガラスが覆ってあって、その下には高そうな金属で出来た鍵穴があった。


「……こんなもん、ぶち開けてやるよ。」


俺は自分の財布から、傘の開閉スイッチを分解して作った鍵、通称『傘鍵』を取り出した。


その『傘鍵』を金属の鍵穴に差し込んだ。


……その瞬間。




<ブーブー>


物凄いサイレン音が響く。


エレベーターのボタンの上についてた赤ランプが点灯しだした。


「……やっべ」




『結人くん!? 何やったんですか!?』




部屋の天井にあったスピーカーからロリ声が大音量で流れた。


「セキュリティチェックしてやったんだよ」


『……はい? 何したのか知りませんけど、とっとと作業してくださいね』


どうしてそんな上からなんだよ。


「ざけんな、俺は家に帰んだ!」


『そんな権利あるわけ無いじゃないですか』


<プツン>


マイクが切れる音がした。


「は……。」


……真衣の夕飯どうしよ。


朝ごはんも……洗濯物だって溜まってる。


さっきの例から、脱獄は不可能。


地下だからスマホの電波入らないし、助けも呼べない。


もう……一択しか無いじゃんか。


「くっそ、メントスに負けてたまるか!」




(チマチマ)(以下略)

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