第15話 【MOVIE4】こんにゃくオ○ホととろろ○ーション
【MOVIE4】
時はうつろぎ、5月。
「ねぇ、アホトの動画見た~?」
「こんにゃくオ○ホととろろーしょんっしょ? 面白かった!」
「いや、時代は淫乱ガールズっしょ!」
耳を澄ますと、いつかのヤジウマ達の下品な鳴き声。
他にも
「こももんー!一緒に帰ろうぜぃ!」
「ヨーカドー寄ってこっ!」
「うん! 行こっ!」
嬉しそうに微笑む間切こももの姿。
ちょっと前まではありえなかった光景である。
今はあの『謝罪動画』をyoutubeに投稿した日から1ヶ月近くたった。
結論から言おう。
あの動画は現時点で300万再生を超える大ヒットとなった。
必死に謝罪して、よくわからなかった動画の作り方やyoutubeの勉強をして、やっとここまで来れた。
そんな頑張りのおかげもあってか、間切こももの炎上も無事沈下したようで彼女はユーチューバーとして復帰した。
動画の内容が土下座だったとはいえ、結果を残せた達成感は大きい。
だが、失ってしまったものもある。
間切にビンタされたあの日以来、俺は間切と一切口を利いていない。
何故キレられたのか分からないのに謝るなんてしゃくだし、ずっと黙っていたら気づけば間切には何人も友達が出来ていた。
元々、俺や藍那が邪魔しなけりゃ、いい性格(いい意味で)してんだから当たり前だとも言える。
対して、俺は気づけば一人取り残されていた。
動画を投稿してから一週間程度は、スーパーのときと違って顔をドアップで撮影したこともあってか、学校内では有名人と化し、クラスの”上位ヒエラルキー”のやつらのネタにされていたが、気づけば空気と化していた。
当然、広告はつけていなかったのでyoutubeからの収入は無く、俺は絶賛バイト探し中に逆戻りだ。
もう、youtubeやユーチューバーに関わることはきっと無いだろう。
俺は自分の席を立つと、既に教室を出たとある人物を探して駆け出した。
校門を出てすぐに、探していた黒とコバルトブルーの髪の少女は見つかった。。
「チッ。あいつら、ボクのもも様に馴れ馴れしくしやがって……。」
舌打ちしながらドブのような低音で吐き捨てる台詞。
こ、こえーよ。
話しかけにくいわ!
……まぁ、話しかけるんだけど。
「ムカつくなら、お前も着いてって邪魔してくりゃいいんじゃね?」
「そうそう。あの豚どもの顔面2、3発ぶん殴って邪魔し……って!」
「結人くん!? もしかして今の聞いてました!?」
聞いてました。はい。
「……聞いてなかった。ってことにしとくよ。」
「ってことは聞いてたんですね?」
「……うん。」
なんとなく、否定できなかった。
「なら、聞いてもらいますからっ!」
聞いてもらう?
「最近、もも様がちょっと珍しいからってハムスター感覚で近づく人多いじゃないですかー。ムカつくんですよあいつら! ちょっと前までヤジウマってた癖に炎上が沈下した途端ベタベタしてきやがって!」
(愚痴を)聞いてもらうってことか。
「……あー。何か熱い手のひら返しって感じだよな。」
「ですよね!? ウザすぎですよ! あの豚ども!」
藍那は両手で握りこぶしを作ってグッとした。
「さっきも言いかけたけど、そんなにムカつくなら邪魔すりゃいいじゃん」
「ボクも、邪魔してやりたくて仕方ないです! でも、それじゃもも様のためにならないんです。」
……やつらの邪魔すると間切のためにならない?
「というと?」
「もも様には他の人と交流する機会を作ってほしいって思ってるんです。例え、あんなカス豚チンパンジー共が相手でも。」
……ひどい言い様だ。
でも、間切のことすごく思ってるんだな。
「それより聞いてください! こないだ、クラスのキンパツインテ豚がもも様と二人きりでピアリ行ったみたいで~~~(以下略)」
(30分後)
「……すっきりしました。」
「お、おう。なら良かった。」
俺は豹変した藍那のマシンガントークを浴びせられ続けた。
……何だか、女子の、藍那の、裏世界を垣間見た気がする。
藍那の間切愛が異常なのもあるのかもしれないが……。
藍那のマシンガントークを聞きながら歩き続けていたら、例の巨大ビルの前に着いていた。
俺が追いかけて来た方だったから自然か。
「で、どうしてボクに話しかけてくれたんですか?」
聞くのおせえ。
「マイクとウェブカメ借りっぱなしだったから返そうと思ってさ」
「……これ、ありがとな。ウェブカメの方は間切に渡しといてくれ。」
「マイクは結人くんにあげたものだったので返さなくてだいじょぶです。」
……えっ、いいの?
メ○カリで売り飛ばしちゃうよ!?
「ですが、ウェブカメは自分の手で、もも様に返してください。」
えー。あいつと話したくないんだけど。
「……なんで? 一緒に住んでんなら返すくらいすぐだろ。」
「人に貸した物が別の人から返ってきたら、いい気持ちします?」
……ぐうの音も出ない正論だった。
「その通りだけど、あいつと気まずいんだよ。」
そう言い返すと一瞬、藍那の顔がニヤリと笑ったように見えた気がした。
「仕方ないですねー。今回だけ、置き手紙ってことでいいですよ」
「おっ、いいなそれ」
さすが藍那。気が利く。
「せっかく来たんですし、今ここで書き置いてきます? 手紙。」
「……わかった。書いてくよ。」
間切はクラスの奴らと出かけたみたいだし、出くわすことも無いだろう。
『ありがと』とでも一言書いてウェブカメ置いたらとっとと帰宅しよ。
目の前の巨大ビル、マーキュリーに入ると俺と藍那はエレベーターに乗り込んだ。
前回同様、超速ダイアルで藍那が階数と思われるものを入力すると、エレベーターは動き出す。
だが。
一つだけ、前回と違うことがあった。
何故かエレベーターが上ではなく下へ、地下へと動き出したのだ。
「あのさ、置き手紙って地下に置いてくのか?」
…………。
俺の疑問に満ちた質問をスルーする藍那。
「……藍那? 今の聞こえてなかった?」
<チーン>
エレベータが停止して扉が開く。
「着きました。」
「……なんだここ。」
エレベーターから数歩踏み出して外を見渡すとーー
全面コンクリートで出来た部屋に、数箱のダンボールが置かれていた。
「突然ですが結人くん。バイト、しませんか?」
、
「……バイト?」
いきなり何言ってんだ?
「時給100万なんですけど、どうですか?」
「……100万!? 時給で!? そんな甘い話あるわけないだろ!」
「その通りです。」
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