第9話 【MOVIE2】円光度
そんなこんなで無事モザイクはつけ終わり、動画の編集は終了した。
間切がやたら身体を密着させて来たせいで、編集のやり方なぞ俺の頭には全く残らなかった。
「動画の編集は無事終わったわね」
「……ああ。やっと動画を投稿出来るな。」
「はぁ? エンコしてないのにyoutubeに投稿出来るわけないじゃない。」
エンコ? 何かヤバイ響きがする。
「……エンコってなんだ?」
「エンコードのことよ。」
援交・ド!?
ちょっと待て、たかだか動画を投稿するために身体を売らないといけないのか!?
しかも、ドのつくほどの援交ってなんだよ!
「なぁ、参考までに聞くがそれって誰とするんだ?」
「……誰と? しいて言うならあたしとかな。」
―――――は?
俺が間切と援交!? 嘘だろ!?
「お前、普段からそんなことしてんのか?」
「普段っていうか大体毎日してるけど。それがなに?」
『それがなに?』じゃねえよ!
動画投稿するために毎日援交してるなんておかしいだろ!
「お前、もっと自分の身体を大切にしろよ!」
間切の肩に両手をあてると、間切は身体をぷるぷるした。
「ちょっ、離して!! あんたいきなり何わけ分からないこと言ってんの!?」
「だって、おかしいだろ! 好きでもないやつと、そういうことするなんて!」
「……そういうこと?」
「…あっ」
間切の頬が突然真っ赤になった。
「何考えてんのよバカ! ロリコン! 変態! バカ゛ぁ!」
◇
「……痛ってぇ。」
目を覚ますと頬の痛みに苛まれた。
あのバカ、思いっきり殴りやがって……。
バタンと音がすると障子が開いた。
「あっ、にーに、目が覚めましたか?」
「ああ。間切のやつはどこいった?」
「真衣が帰って来た時はもう居なかったです~」
帰りやがったのか。
「そのほっぺ。にーに、てーだそうとしてふられたんですね~」
「ちげーよ、てーだしたらぶたれたんだ。」
心配してやったのに、恩を仇で返しやがって。
「てーだしてぶたれる? まさか……にーに、ノンルフィで!?」
「……何言ってんだ? 今日の真衣、なんか変だぞ?」
「変(態)なのはにーにです」
「それより、にーに!!」
「こももちゃんってユーチューバーだったんですか!! どうりで、どっかで見たことあったのです~」
……こももちゃん? さっきは『キャバア』とか言ってたのに!?
つーか、真衣と間切は一瞬だけど、病院で会ってたような。
「そうらしいな。」
「どうして言ってくれなかったんですか!?」
「言う必要あったか? 真衣が好きなのは『おこう先生』とかいうおっさんだろ」
「そうですけど、有名な人に会えたんだと思うと嬉しくて……!」
有名だからなんだってんだよ。
「これからこももちゃんのことも好きになりますからっ!」
スマホでyoutubeを開く真衣。
『おはようつべ!』
なんだよ、おはようつべって。だっせぇ。
『今日は全自動たまねぎ切り機を紹介してきまーす!(デデン(小太鼓のSE))』
否定ばっかしで悪いけど、たまねぎぐらい自分で切れよ。
『玉ねぎ切り機ィ? こんなの包丁で切ればいいじゃん!』
『つーか、これどうやって使うわけ? 起動しないんだケド?』
『<ゴン><ゴン><ゴン><ゴン>』
『【ちょっ、もも様! 何やってんですか!】』
顔は出てないけど、この声と口調は、藍那だな。
『えー、だってこれ使えなくて~<ゴンっ>――バリッーー』
『あぁあfsf―ああああああああffsくぁせふ』
『「※自腹買取になりました。」(チーン(お鈴のSE))』
ちょっ!? 紹介つーか、ぶっ壊しただけじゃん!
『(シュン(瞬間移動のSE))』
『玉ねぎなんて自分で切りゃいいのよ。――サクッ』
『目が、目がァァああああああshんふうえーーポトッポトッ(涙)――』
『(シュン(瞬間移動のSE))』
『「替えの切り機が届いた!(もう壊すのはイヤだから事前に設定してもらった)」』
『――サクッ』
『ーーポトッポトッ(涙)――』
『【なんで機械で切ってるのに涙が!?】』
『だって……こんな簡単に切れるなんて感動して;;』
『「エンディングの映像」』
『「高評価&チャンネル登録お願いします!!」』
正直、悪くなかった。上手いこと締めててビックリだったし、あの間切が感動とか言って嘘泣きしてたのも、見てて面白かったし。
「こももちゃん可愛かったのです~」
「ああ、以外と良かったな。俺、他の動画も見てみたいって思ったよ。」
と真衣のスマホを見ながら答える。
「じゃあ、これなんかどうですか~!?」
と真衣が関連動画を指を指す。
指さされた先には【こももちゃんが暴行被害?!】というタイトルが。
「真衣!それはやめとけ!」
俺と店長と殴りあってる姿なんて真衣に見せたくない。
「もう、遅いです~」
真衣がリンクをタップすると、数秒の広告の後に動画が再生され始めた。
スマホの画面に映し出される俺。
「えっ!? どうしてにーにがいるんですか~!?」
……あーあ。
「俺と間切のやつの出会いには色々あってだな……。」
「ほんとに、色々あるのですね~」
と言うと真衣がスマホ俺の真ん前へ突き出す。
真衣のスマホに目を見張ると……
「なっ!?」
なんと、ぶっ倒れた俺に間切こももがキスしていたのだった!!
正確に言えば、キスではなく人工呼吸というやつだ。
間切が必死そうな面で気絶した俺に空気を送っていた。
「マジかよ……。」
あの時、唇に何かが触れた気がしたのはこれだったのか。
性格最悪とはいえ、あんな可愛い女の子と俺はキスしたってのか……。
意識が無かったから何も感じねーや。すげえもったいねー。
「スクショしときます~」
カシャッとシャッター音が鳴る。
「そんなの撮んなくていい!」
と真衣のスマホを取り上げようとした瞬間。
「……うわっ、なにこれ」
真衣の引き声。
惑った俺は思わず、俺は手を止めて真衣のスマホを見ると……
”は? こんなやつと小桃ちゃんがぁああああ”
“4ねよクソガキ”
”初めては俺がもらうはずだっだのにぃいいいい”
と『コメント』と書かれた下に文字が。
「……何でこいつら、こんな発狂してんの!?」
「たぶん、にーにを羨んで、嫉妬で怒ってるんですよ」
羨むまではまぁ分かる。けど、嫉妬で怒るってなんだ。
お前ら何様なの? 間切の許嫁にでもなったつもりかよ。
「キモイな、こいつら。」
「にーに、ひどっ」
「ひでえのはこいつらの方だよ。」
嫉妬に狂うより、紛いなりにも間切を助けた俺を讃えろや。
「にーにがそんなんだから炎上しちゃうんですよ~」
「俺の態度関係ある!?」
俺の態度はともかくとして、炎上の原因はこいつらの嫉妬じゃん。
ただ単に、間切の知名度が高いから、こんなしょうもない殴り合いで炎上しちまったんだと思ってたわ。
―――――コテリン(コナンのひらめき音)
閃いてしまった。
しかし、こいつを実行するには真衣が邪魔だ。
「……ううっ。」
俺は腹を両手で抑えた。
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