第3話

試合を終えた後、貴方は私を呼び出した。

もしかしたら? とドキドキした。

なのに、貴方は可愛い女の子と2人で現れた。

動揺を悟られないように、作り笑いをするのが大変だったよ。


「こいつ、彼女なんだ。悠里には一番に伝えたかったんだ」

と紹介された時、胸が張り裂けそうだった。

笑えなくなるんじゃないかと思えるぐらいに。

いつか、貴方と両思いになれると思ってた。


だけど、貴方が選んだのはクラスメート。

私とは正反対の大人しそうな可愛い子。


絶望って、こんな気持ちなのかな?


彼女に向かって照れ臭そうに笑う貴方の顔は、私の見たことのない顔。

向かい合う2人に、お互いに思い合ってる事を嫌ってほど知らされる。


ずっと一緒に居たのは私だったのに、貴方が選んだのは出会って数ヵ月の女の子。

手を繋いで立ち去っていく貴方達を泣きたい気持ちを我慢して見送った。


ねぇ? どうして彼女だったの?

ねぇ? どうして。

貴方の隣に居るのは、ずっと私だと思っていたのに。


今、貴方の隣を歩くのは私じゃない。



ダンダンダン・・・床につけた耳に響いたドリブルの音に、ハッと我に返って体を起こした。

貴方が来てくれたのか? と喜んだけれど、ドリブルしていたのは気難しい顔をしたキャプテンの姿。

 

慌てて涙を拭って立ち上がる。


キャプテンはドリブルをしながらゆっくりと歩いてくる。


「バカが! 1人で泣いてんな」

「泣いてませんよ」

そんな私の強がりをキャプテンはすぐ見抜くのだろうな。

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