第16話

 最初に彼女に声を掛けたのは、優一だった。


「千歳…」


 不意に彼から初めて、彼女の名前が呼ばれる―


 密かな時めきで胸を鳴らした千歳に、優一は笑顔で云った。


「ちゃんと授業、聞いてたよ…?


 有難う…


 御蔭で、お兄ちゃん…

 何とか社会人、やってけそうだ」


「!


 『お…にい、ちゃん』…?」


 ハッとする千歳に、優一は頷いて見せた……。

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