第37話 Fランクダンジョン
やってきましたギルドです。ちょっと道に迷いましたが無事到着しました。
ここがダンジョンの前にあるギルドです。皐月ちゃんとの約束を断りながら探索もせず家に帰るわけにはいかなかったので、探索するためおとなしくギルドにやってきました。いつもの装備は身につけていないです。が、今日も探索頑張ります。
「ここが東京第52ダンジョンか? 合ってるのかわからんな」
初めてくる場所のせいで自信はない。
Fランクダンジョンということもあり、Gランクダンジョンだった東京第49と比べて少しばかり施設のグレードが上がっているようには見える。
と言っても、見かけ上、多少作りがよくなった程度で、手入れの行き届いていない古民家が手入れの行き届いている古民家になったような違いにしか見えない。
要するに、素人の僕にはまだまだ質素だ。ということしかわからず特筆できる点はない。
建物ソムリエじゃないことが悔やまれる。
しかし、居心地が悪いな。
いつもと違う装備というだけでなく、謎のコンパクトに木の棒まで持たされて完全に変なヤツだ。装備はどうにか制服ではなく、試作品の装備を無神原から借り受けたが、それにしたって防御力が低いらしく不安だ。ただ、とにかくなんでもいいからさっさとダンジョンに送り出したい様子だったため、この辺は無神原にしてはめずらしく、簡単に渡してくれた。
マジでなんなんだ。
魔法でも使えたりしてね。って、役割かぶってるだろ。ってか、魔法生成AIなしでスキルのない僕はどうやってモンスターを倒せと? とうとう魔力変換による武術方面に本格的に移行しろと?
なんて考えながらギルドに入る。
中には新しい顔ぶればかりの環境があり、知り合いは見当たらない。そもそも探索者の知り合いなんて数えるほどしかいない。ひたすらによそよそしく歩くもやっぱり落ち着かない。
それに、なんでか知らないけどコソコソうわさされている気がする。
ここ最近の配信のせいで、向こうはこっちの顔を知っているのかもしれない。
こいつは厄介だぜ。まあでも、それならそれで知名度を活用させてもらおうか。
「あの」
「ごめんなさい!」
話しかけただけで女性探索者に全速力で逃げられた。
ちょっと、いや、めちゃくちゃ傷つく。キラースクリーマーの名は伊達じゃないってことか……、これは、諦めないで、あきらちゃんとか名乗っておくべきだったかな?
結局、あ、きらちゃんだから、キラーちゃんだね。みたいになってそうだけど……。
しばらく声をかけようと奮闘したが、近づくだけで逃げられてしまうようになったのでもう情報収集を諦めておとなしく受付へ行った。
いじめられてるのかな?
なんて悲観的になったところに、ここで初めて見知った顔に出会った。
「え、明尾さん? 明尾さんじゃないですか! どうしてこんなところにいるんですか?」
「これはこれは、あなたは丸木さんじゃないですか。おはようございます」
「おはようございます?」
おや、ここは日本なので、今はすでに、こんにちは、か、こんばんは、の時間だと思うのだけど。おはようございますなのか?
「すみません。裏だとおはようございますと言う決まりなんです」
「ほうほう。業界ですね」
よくわからないけど、挨拶がおはようございますで統一されている業界があるという話は聞いたことがある。
これも無神原の愚痴で聞いた気がするが、まあいいや。
「でも、東京第49ダンジョンはまだ攻略されてないですよね? どうして明尾さんがこちらに?」
「私たちにも色々と事情がありますからね。私は攻略前にこちらへ回されました」
「なるほどなるほど」
どうやら、ダンジョン受付業界にも一般探索者には知られていない裏事情があるらしい。
そりゃ、いつでもおはようございますの業界だしな。秘密の1つや2つ余裕であるだろう。
ちょっと喜んじゃったけど、僕のために移ってきてくれたわけではないわけだ。そりゃ当然だよな。
「どんな理由でも明尾さんに会えて嬉しいです」
「私も、知らない人ばかりなので丸木さんと会えて安心しました」
僕に会いに来てくれたわけじゃないだろうが、素直に嬉しい。
心が高鳴ってしまう。これは無神原への怒りも収まるね。
「では、本日はここ東京第52ダンジョンの攻略でよろしいですか?」
「はい。挑みます」
「それでは、Fランクに上がったので、丸木さんなら問題ないでしょうが少々注意点を案内させていただきますね」
「注意点?」
「ダンジョンはランクが上がると、当然、相手にするモンスターのランクも上がります。より強力な個体が増えるので、死傷者が増えるんです。なので、十分注意をして探索に臨んでください。もちろん、丸木さんには不要な案内でしょうが、一応決まりですので」
「いえいえ。ありがとうございます」
明尾さんの忠告がなかったら今頃死んでたかもしれないしな。
これで僕は今日も探索で生き残れるだろう。
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