第15話 ミクルメクミラクル!2
その場って、さすがに今僕がいるここってことじゃないよな? そうすると、何かの比喩かな?
しかし、「その場」という言葉から連想できるものを特に教えてもらった覚えはない。
それに、僕のほうが下っ端なんだし、もっと雑な扱いをしていいと思うのだけど……。
「すいませーん! お待たせしました!」
「え、あ、ミクルさん! それに、ジンガさんとヨシエさんにミユキさん!」
ミクルメクミラクルのパーティ全員集合で何も連絡していなかったのに僕のところに来てくださってしまった。
日本語がおかしい気がするけど、とにかくこんな場面に僕がそうぐうしてることがおかしいのだ。
「どうしてここがわかったんですか?」
「すぐ近くだからですよ」
駆け足ながら息も切らせず、4人の女性は僕のもとまでやってきた。
ダンジョン内の華やかさがグッと上がった。さすが、今をときめくミクルメクミラクルのみなさん。
「実際はずっとさが、んぐ!」
「え、あの、大丈夫ですか?」
「ああ。心配しないでほしいッス。これがウチらのノリなんで。新しい子見てはしゃいじゃってんスよ」
「そうなの。探索者として後進が育っていることが嬉しいだけだから安心して大丈夫だよ」
「なら、いいんですけど……」
結構ガッツリ口を押さえられ、3人がかりで動きを封じられているジンガさんの様子は少し息苦しそうに見えるんだけど……。
まあ、それがパーティ内のノリだというのなら僕には口出しできないな。
探索者ノリってのは、なったばかりでまだわからない。
「あはは。ごめんなさい。本当にみんな浮かれちゃってて。あなたみたいな優秀な人と会えることなんてそうそうないから」
「優秀だなんて、そんなことないですよ。僕が倒さなくっても、みなさんがいたなら、困っていた探索者も助けられたでしょうし」
「いやぁ、それなんだけどね……」
口を押さえられていたジンガさんの暴走も止まり、ミクルメクミラクルのみなさんはパーティ4人で顔を合わせて急に静かになってしまった。
知らないヤツが混じってテンション下がってるとかだと悲しいけど、そんな様子ではない気がする。ないと思いたい。
「助けてもらったのが私たちなんだよね」
「そうそう。キラーアイアンから逃げてたってわけだな」
「何を偉そうに言ってんスカ。まあ、事実なんスけど」
「キラーアイアンはみゆきたちじゃ敵わなかった相手だったの」
「なるほどなるほど」
「だから、私たちが来てるって伝えたから急に配信を終わらせちゃったみたいで申し訳なくって。全然、キラースクリーマーちゃんの都合でよかったのに」
少ししょんぼりした感じでみなさん僕の様子をうかがっている。
なんだろう。とても居心地が悪い。
人違いしていたし、勘違いしていたから、僕がミクルメクミラクルのみなさんのことを弱いみたいに言ってしまったみたいで、マジで胃が痛い。
「あの。みなさんのことを軽んじているとかではなくてですね。それに、素人なのでこちらが何て言うか、折れるのは当たり前のことですから、気を遣わないでください。ええもうぞんざいに扱ってください」
「いや、軽んじられてるなんて思ってないですよ。それに、命の恩人をぞんざいになんて扱えません。ただ、本当に助けてもらって会いたかったのに無理して会ってもらったみたいで……」
「こちらこそですよ! むしろこちらから会いたかったくらいですから」
「そ、そうなんですか!?」
「いや、でもあれかもしれんぞ?」
「ありえるッス」
「不安なの」
またしてもじっと顔を見つめられてしまう。
やはり、僕の一挙手一投足は見張られていると思ったほうがいいな。先輩たちは、僕がこれからも生き残っていける探索者かジャッジしようとしてくれているのだ。
「みなさんの配信に映っていたことがきっかけで今の僕があるので」
「……怒ってないみたい?」
「……大丈夫じゃないか?」
「……あんまりコソコソしてると逆に怒らせるんじゃないスカ?」
「……ミクルちゃん。頼りにしてる」
「……ええ!? 私?」
僕を見てコクコクうなずき合っているのは合格ってことでいいのか。
こほん、と小さく咳払いをして、一歩前に出てきたミクルさんの優しい笑顔は、素人の僕には何を意味しているのか判断できない。
「そ、それこそ配信に映したのが私たちだったのはたまたまですよ。キラースクリーマーちゃんなら、いずれバズってたに違いないですって」
なんだか声が上ずっている気がする。
もしかして、まだ気を遣われている!?
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