第13話 スカウトが来てます
さっきから配信についてるコメントの流れが加速している。さすがに無神原のほうへの連絡まではわからないが、配信のコメント量からして、無神原への連絡もきっと多いのだろう。僕に押し付けられている魔法生成AIとやらが注目を集めているらしい。
しかし、僕の評価をいい方向へ変えようとしていたはずなんだけど、コメントをざっくり見る限り、僕に対する評価が僕の認識からどんどん乖離していっている気がするんだけど、これどうなってんの?
キラースクリーマーとして持ち上げられている?
なぜに? どうして?
:そういえば、キラースクリーマーちゃんのなりすましは結構見たけど、所属偽造ってのはないよな
:うちの子ですって言って破壊されるのを恐れてるんだろうな
:本人はしないって言いそう
:ただキラースクリーマーだしなぁ
:見たところ、有名クランでさえ探索者殺しと連絡取るにも配信でコメント残してるくらいだし、マジでどこにも所属してないんだな
「どこにも所属してませんよ?」
変なうわさはすでに立っている気がするが、変な対応は極力避けたい。そもそも、僕としては組織を敵に回したい意図はないからな。
「本当に無名ですし、僕のランクがGランクなのは示したとおりです。いわゆる探索者殺しについては、たまたま知り合いだっただけです」
:たまたまw
:そしてたまたま魔力が人外レベルだったと
:うーん。これは天才
:いや天災だろ
:むしろ天然かもしれない
:人間の姿をしたAIがキラースクリーマーちゃん説ない?
「人間ですから! さっきから僕の扱いモンスターっぽくなってますけど、僕はモンスターじゃありませんからね?」
『それと、人型AIでまともなものを作れないのは事実だよ。探索者殺し博士は私を最新作としてくれてるんだ』
「お前はマジでどんなキャラなんだよ」
『君の助手さ』
信じてるのやら信じてないのやら、僕の存在や無神原の実力に不思議が移っている。ずっとホクホクでいいよな、無神原は。安全圏だしさ。
:本当に無所属でこれ?
天下布武:どこにも所属していないのでしたらぜひうちへ
ルミナスウォーリアーズ:いや、まずはうちだろう! スキルの扱いからランク上げまでサポートできる
ドッグハンター:いやいや、小規模だが人の顔がわかったほうがいいはず!
叫ぶ民:同じ血を感じました。一緒にダンジョンで叫びましょう
「ええ!?」
:同接5万超えたと思ったらなんかスカウト祭り始まってるんだけど
:改めてチャンネル見てみたけどどこも本物っぽいな
:とうとう本物判定か
:さすがに無視できないほどの反応だもんな
:魔法生成AIと探索者殺しとのツテがあるのも大きい
本物も何も僕は僕なんだけど、これはどうしたらいいんだろう。
:さっきまで結構がんばってたのに急に固まってあたふたしてるのかわいい
:まだまだ配信慣れてない感じなのいいよな
:実績とのギャップがいい
:素が出てる素が出てる
:配信中だよ! キラースクリーマーちゃん
「えっと、あのみなさんちょっと、お、落ち着いて」
:まずはキラースクリーマーちゃんが落ち着いて
フルカラーズ:個性を尊重してます。一緒に探索しましょう
東京ダンジョン統括本部【公式】:ぜひうちで受付嬢をしていただけませんか
マッスルクラブ:あなたのキラーアイアンを倒した方法にはマッスルを感じました。ぜひマッスルに
ミクルメクミラクル:もしよければどこかで会えたらと思ったんですけど、キラースクリーマーちゃん? って達成したいこととかある感じですか? そのお手伝いができたらなー、なんて
「あ」
キタ!
公式のチャンネルによるコメントが多数流れてくる中で、僕はしっかり見逃さなかった。僕のしたいことを聞いてくれたミクルメクミラクルさんのコメント。パーティの誰がコメントしてくれたのかはわからないけども、僕の願いはようやく届いたらしい。
いや、でも、ここ配信だよな。一人を相手に反応していいのか?
無神原『コメントには気づいたろ? 君のことだ、どうするか迷ってるだろうと思ってこっちで連絡した。ミクルメクミラクルへの連絡はメッセージでバレないように送ってみればいい』
丸木『なるほど。ありがとう』
さて、やることは決まった。あとはこそこそとバレないように返信をするだけだ。
「僕のことを正しく認識してもらえるならどこかに所属してもいいかなとは思ってますけど、難しいですね」
:認識してますよw
:キラースクリーマーちゃんですよねw
:知ってますともw
:うわああああ!
:これは叫ぶ民の方々も草
「それです。それを改めたいんです」
だから、ミクルメクさんたちから、と思ったけど、大多数の人の誤解を加速する形になっている気がする。だが、今さら立ち止まることもできまい
キラースクリーマー『フォローと配信でのコメントありがとうございます。ぜひ、どこかでお会いさせてください』
ミクル(ミクルメクミラクル)『連絡してよかったんですね。本当によかったです!』
キラースクリーマー『もちろんですよ』
ミクル(ミクルメクミラクル)『配信しながらメッセージ送ってるんですか? 器用ですね』
キラースクリーマー『そうですかね? ところで場所はどちらがいいですか?』
ミクル(ミクルメクミラクル)『そこ、昨日と同じダンジョンですよね。実は私たちも東京第49ダンジョンに来てるんです。配信の後で大丈夫なので、よければどうですか?』
キラースクリーマー『わかりました。配信の後ですね!』
約束を取り付けた。
これでまず第一歩の目的は果たした。
ふっふっふ。
ミクルさんとメッセージできたし、もうこの配信で狙っていたことは万々歳の達成だ。むしろ、うまくいきすぎて怖いくらいだ。
:探索者にも色々な人がいるんだな
:そりゃそうやろ
:にしてもキラースクリーマーちゃんの周り、モンスター少なすぎだわw
:叫んでなくてもモンスターに圧をかけているスタイル
:倒してるって言ってたけど、射程も視野も広すぎだよなぁ
コメントも僕の受け答えを疑うものはなさそうだし、どうやら気づかせずにできたようだ。僕の器用さも上がってきたようだな。
ミクルさんにほめられたし。
無神原『ニヤニヤしてるけど、どうしたんだい? 私に見えないところで何をしているのかな?』
丸木『ニヤニヤしてない。それに、お前にニヤニヤしてるとか言われたくない。目的を果たしたし、お前の発明の広告もしたから配信閉じるぞ』
無神原『え、おい。どういうことだいそれは』
丸木『どういうことって、言ってあっただろ?』
なんで無神原が僕のメッセージの内容を気にしてるのか気になるけど、どうせよからぬことでも考えているんだろう。
:ウォッ同接10万?
:これ、このままいくと無限に人集まるんじゃないか?
:こっから探索するのか? 楽しみすぎる
:一気に東京第49ダンジョン攻略か?
:最速攻略タイム出ちゃう?
「すみません。ちょっと予定が入っちゃったので今回の配信はここまでにします。見てくださったみなさん、ありがとうございました!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます