第12話 魔法生成AI推奨スペック

 なんだか慣れた調子で魔法生成AIを使ってしまっただけに説明が下手になっていたようだ。そのせいで反応がイマイチだったのだろう。

 まあ、僕だって取り扱い説明書を見て使っているわけでもないし、見て使えるようになったわけでもない。スマホみたく、手に取ればわかるタイプだと思うんだけどなぁ。


 ってこれ、もっとさらっと終えるべきだったのでは?


:さっきからの内容トレンドに入ってるな

:トレンド入りおめでとうございます!

:まあ魔法生成AIの火力はやばいからね

:やっぱり、叫ぶとキラースクリーマーってトレンド入りするんだな

:キラースクリーマーちゃんだもん


「いや、やめてくださいその名前広めるの」


:自分で名乗ってるから無理よ

:これはもう上書きできないな

:だってキラースクリーマーちゃんって感じするし

:わかるwww


 どんな感じだ。


「キラースクリーマーの話題でなく魔法生成AIですよ。質問がないなら、元の話題に戻ろうと思うんですけど」

『もうちょっと頑張ってくれないかい?』


:働けって言われてるw

:元の話題ってなんだっけ?

:気になることねぇ

:使える魔法は何があるんですか?


「それならわかります。今は炎熱系の魔法だけみたいですよ」


:ショボくね?

:火力は強いけど、相性で終わりでは?

:でも、あれだけ火力あれば貫通できそうじゃない?

:うーん。ゲームとかと同じで無効はマジで無効だからなぁ

:炎だけに火力高いのに……


『キラースクリーマーちゃんの使用に応じて解放されていくから期待しててくれよな』


:急な謎キャラw

:情報小出しすぎてよくわからん

:つまり何ができるんだい

:もっと詳しい説明がほしいです


「おいおい。詳しく説明を求められているぞ」

『説明を求められているぞ。じゃないんだよ。その説明は本来君がやる役割だったはずだろう?』

「僕は結構しっかりやったぞ? 鉄だって溶かしたじゃないか」


:そこなんだよなぁ……

:そもそもスキルが使えても、鉄溶かしてる動画なんて見たことないぞ?

:一応Cランク探索者だけど鉄を溶かせるような魔法をホイホイ使われたら困る

:コメ欄の詳しい人に聞いたほうが早い?

:あんまりいいコメントかもしれないけども、それはそれとしてどうなん?

:いや、予備動作も詠唱も魔法陣も準備も何もなく鉄を溶かすような火力が出る探索者はトップもトップだよ。そんなヤツとパーティ組んだら足手纏いか巻き込まれて溶かされるかどっちかだろうな

:あー

:それはそう。味方からの攻撃で死ぬのは勘弁

:桁違いのソロ用か


 なるほど。設計的にそうなのか。

 やはり、人が集まると本物のプロの意見が出てきて勉強になるな。

 僕も以前どこかのボス戦動画で、大規模魔法を複数人で準備しているものを見た気がする。その時も、これは鉄を溶かすほどの温度なので良い子は真似をしないでね、みたいなことがジョークとして書かれていた気がする。


 って、あれ? Cランクの人のコメントでパーティを組みたくないって、それはそこそこヤバいのでは? ミクルメクさんたちと会えないのでは?


「おいAI。もちろん火力調整はできるんだよな」


:事前確認不足してて草


『そりゃできるけども、君の魔力じゃあ調整してもそんな努力は雀の涙みたいな違いでしかないよ』

「なんだよそれ。魔力の問題なのか? それ」

『そもそも魔力について軽く解説しておくと、スキルの源なだけでなく、色々なマジックアイテムの電池みたいな役割もする生命エネルギーみたいなものだからね。ブレーキつけるとダサくなるし仕方ないのさ』

「わからないでもないけど、なんかたとえとかないの?」

『有名なところで言えば、火属性の魔法剣なんかを一日動かせる魔力があると探索者としてはかなり優秀ってところかな』


:それは聞いたことあるな

:都市伝説じゃなかったんか

:まあ、マジックアイテムの使用に困らないのも、スキルの次くらいには探索で大事になってくるしな

:Cランクでもそんなやつ一握りだけど

:そんじゃ、キラースクリーマーちゃんのやってることは魔力換算どれくらいなんだ?

:今使ってるのが魔法剣じゃないからわからなくね?


「たしかに、この魔法生成AIってどれくらいの魔力量があれば使える想定?」

『まあ、ざっと一ヶ月探索を続けて、その間中ずっと魔法剣を使い続けられて、スキルも使い続けられて、それでも余裕があれば、一回の探索で必要な魔力量はまかなえるかな』


 ん? 一ヶ月? ずっと? それで一回の探索分?

 僕の聞き間違いかな?


「すまん。もう一回言ってくれないか?」

『ざっくり一ヶ月は地上に出ないで探索を続けられるような探索者なら問題なく使用できるってところだよ』


:それってそこそこの探索者ならいける?

:いや待て、当然休みつつだよな?


『いや? 飲まず食わず寝ずの時間だから、普通の探索をしている勘定なら最低3ヶ月から1年以上は探索を続けられる探索者ってところかな』


:そんなん補給物資とか必要なのでは?

:Sランクにもいるの?

:そんなん人間じゃねぇ!


『だからそう。なかなか扱える探索者がいなくてねぇ。キラースクリーマーちゃんとの出会いは、まさに僥倖だったよ』


:完全に扱いがモルモットじゃねぇか

:キラースクリーマーちゃん、今すぐそいつを外せ!

:捨ててしまえそんなもの

:使える魔法が限られるよりよっぽど欠陥じゃねぇか


「そんなもん持たせてたのかよ」

『まあね。ただ、問題はないと思ったけど、どうだい?』


 言われてみてもたしかに問題はない気がする。ここまで結構魔法を連発しているが体に異常は出ていない。そもそもゲートで飛ばされた時の連発でも疲れはしたが魔力切れで死にそうになったりはしていない。


「普通だな。口から出まかせなんじゃないか?」


:こっちも化け物だった。


 いや知っている。無神原はこんなところで嘘をつくようなヤツじゃない。

 だから魔力消費の部分については本当のことなんだろう。僕の魔力が計測できなかったって話も、そうなると多分本当だ。


:さすがキラースクリーマーちゃん

:類は友を呼ぶってことね

:モンスターに逃げられるくらいだしね


「類友でもないし、逃げられてない!」


:また気にしてて草

:にしてもお高いんでしょう?

:試してみる価値はありそうか?

:魔力しかなくて使えるってんなら試したいけどなぁ


「みんな気になってるみたいだけど、お値段はおいくらなんだ?」

『私と要検討。まあ、付ける機能やアップデートをするかどうかによってってところかな?』


:それって機械を導入する時とかの値段の出し方じゃないの?

:完全に一般探索者用じゃなくて草

:こんなん買うヤツおるんか?


東京ダンジョン統括本部【公式】:導入を検討したいのですがどこに連絡すればいいでしょうか

ダンジョンの探索者:取り扱いたいな

ドッグハンター:試しに使うことはできますか?

ルミナスウォーリアーズ:クランで使い回しなどが可能なら使えそうだと思ったのですがそこのところはどうなんでしょうか


:有名どころがコメ欄で反応してる


「本当だ」


 僕でも名前の聞いたことのある組織や個人からコメント欄に反応が返ってきている。お金のある探索者やお金を集められる組織にとっては、いくら馬鹿げたものであっても話を聞いてみたいってことなのか?

 それとも、無神原の発明だから……?


『連絡は探索者殺し博士へのコンタクトと同じようにとってもらえればいいのだ』


:知らねー

:一見さんお断りってことね

:誰か教えてくれぇ

:だから言ったろ、探索者殺し(金)って

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