第29話

「有難う、さえ……


 私は、生き直せる…


 御前の温かい手が、私を励ます限り…!」


「ああ…!」


 最早、言葉は要らぬ…


 悠庵は、さえの両肩に手を移し―彼女に口付けながら、彼女を抱き寄せ…更に深く、唇を重ねる……


 抱き締められたさえも、悠庵の背中をいだき…彼の想いに、己の想いで応える……


 六年―いや、ずっと、ずっと昔から…彼等は、互いを想い続けていたのだ……。

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