第71話

 その薬指で唯一、光を失わぬ儘の…結婚指輪マリッジリングが、切ない……


「花音さん…?」


 動揺する、奏逸朗…


 険しい表情かおをした、花音…

 グッ、と彼女の手に、更なる力が籠る……


「ばかっ!?


 コントラバス、弾けなくなるじゃないっ!?」


「う…


 だって…!?」


 彼女の叱咤に、彼は言葉を詰まらせる……


「たとえ、『楽団辞めた』とか、言ったとしても…


 全然、嬉しくないんだからねっ…!?」


「あ…!?」


「病院行くわよっ!?

 病院っ!!」

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