第70話

 花音は、深く頭を下げ続けている奏逸朗の方へと、向き直った。


 ポツ…ポツと、床に彼の涙が落ちる…


 そして、その揃えられた、彼の指先にも―


「―!?」


 花音は、驚愕した。


 繊細で綺麗だった、奏逸朗の白い手指…


 それが今、醜く歪み…腫れ…

 赤黒く、焼け爛れているではないか…!?


「奏逸朗さんっ…!?


 これっ…

 何て事、したのっ!?」


 花音は、そう声を上げ―奏逸朗の左手を、掴み上げていた。


 彼が自ら潰し、焼いた、打撲と火傷だらけの手…

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