第8話

 奏逸朗は花音に促され、独りで室内ユニットボックスに入って、シャワーを浴び―腰にバスタオルを巻いた格好で、珈琲を飲む…

 コーヒーソーサーを手に、ブラックコーヒーを飲む彼の所作は、とても洗練されている……


「チェリーくん、お坊っちゃまでしょ?

 30円のコーヒーが、凄く高級品に見えるわ…☆」


「あ…ははっ…」


 初めて、彼は…微苦笑した。

 その端正な横顔が、更に好ましい物になる……


「…おいしい…!」


 不意に奏逸朗が、涙ぐんだ。

 花音は、それには気付かぬ振りをして、口を開いた。


「良かった…

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