第32話 ポエムメール


「ITTへのネットワーク工事発注経緯について(所感)」。


6月29日、情報センターに朝熊事務局長が来て、ITTへの発注が決まった旨を告げられ、『意外』と『案の定』のアンビバレンツな気持ちが交錯しました。


意外というのは、6月8日の会議で、


・今後、本学の窓口は遠藤さんに一本化することをITTに伝えるということ

・そもそもITTには調査をお願いしただけであること

・「原因調査 → 提案要望書(仕様書) → 各社提案の検討」という一般的プロセスを踏んでいないこと

・Wi-Fi問題や補助金がスケジュール優先の事情があったとしても、本学からの唯一の要望である工事計画確認書が一顧だにされていないこと


を踏まえて、本件は一度、仕切り直しといったことが話し合われ、上記は、会議参加者の共通認識事項になったと理解していたからです。議事録が無いことが不思議ですが、そのとき1つの異論も出なかったはずです。


そして、6月22日に朝熊さんから『昨日、ZOOMでITTとの打合せがあった際の資料です。』というメールがありましたが、その内容の多くは、すでに6月8日の会議で説明済みのことであり、しかも『6月24日までにITTに発注するかどうかの返答が必要』とあったことから、前述のハードルをわずか2日間で超えられるとは思えず、当然、8日の会議の決定通り『いったんリセット』になるだろうと予想していたからです。」


一方で、自分が心のどこかで『案の定』とも思っていたことに気がついたのは、昨日、休暇をとって、6月29日の朝熊さんとの3時間にものぼる話し合いの録音を聞き返しながら、頭を整理してみたからです。

その話し合いの内容は、ざっとまとめると、以下のような感じでした。


これまで色んな人に何度もしてきた技術的な説明のあと、私が

「技術的な説明を求められればどこまででもできますが、本件の本質は依頼プロセスの異常さであって、発注が適正であるかどうかは、純粋に事務的な問題です」と言ったあと、朝熊さんから出た言葉が、『結局、理事長命令なんだから従うしかないんだよ』だったということでした。

この一言で、多くの人に同じことを何度も何度も説明しながら感じていた、糠に釘を打つような違和感が氷解し、ある意味、朝熊さんの正直さに救われた想いです。

今回の、工事対象の3棟のネットワーク管理を情報センターから情報システム課に移管するという措置も、一連の経緯による情報センターへの斟酌だと愚考します。


私は、獅子堂城雄先生に私淑して約30年になります。組織が体質を変えようとしているように感じるのは残念ですが、私は本学を来年度で去る身です。それ以上に、私が知る限りにおいて、もっとも忸怩たる思いを抱いているのは遠藤さんではないかと思い至り、杞憂であることを願いつつ、本メールを出しておくことにしました。

私は3月に退職した経理部の砂川英寿に何もしてやれなかったことをずっと後悔し、彼が病んでしまった理由を考え続けています。今回もまた何ができるわけではないのですが、6月8日の会議のあとにバクさんとこんな会話があったことをお伝えしておきたくなりました。


私が「今から『いったん仕切り直し』っていっても、相馬教授がいう『それでも今年度中には(全棟工事を)実施』て、時間的にきついんじゃない?」と言ったとき、彼は、「もし、遠藤くんがそれをやるって決断したら、僕は全面協力するつもりですよ」と即答してくれました。

大した話ではありませんが、人間は希望がないと孤立感からメンタルを病みますから、ささやかでも誰かの心の健康の足しになれば、と思いまして。


以上





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