第16話 自分に鞭うつ?

 思考を止めるのは、呼吸を止めるのと同じように難しい。短く止めるのは簡単で、長く止めるのは難しい。

 思考が特定の場所にさしかかると、スイッチが入ったように疲労感に襲われて、思考や感情が停滞することに、ラマは気がついた。それでいて思考は、気がつけばそこへやって来て、地雷の周辺をぐるぐると徘徊している。


 日中は成仏できずに徘徊する幽霊のような思考は、深夜に姿を現した。眠れないのは寝ないで聞いて欲しいことがあるからなのだろう。そう考えたラマは、トイレのあとに眠ろうとする努力を諦めた。


 「夜明け前が一番、暗い」というが、眠れずに迎える夜明けは、もっと暗い。繰り返される思考のループを野放しにしておくと、時に何かが暗闇で小さな青い灯りを発する。灯りの意味も価値もわからないまま、枕元のメモ帳にそれを書き記す。

 それを一週間ほど続けると、脈絡のない想いがメモ帳に並んでいく。それらの総体が一つのメッセージになって、自分にしか理解できない言葉で、語りかけてくるようだ。

 ラマはそれに、耳を傾けた。

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