第2話 読売新聞の自殺
2017年 5月22日
財務省を舞台とした総理夫人を名誉校長に迎えた森本学園への国有地の不正値引きは、文書改ざんなどの疑惑から多くの市民団体に告発されたが、黒川弘務検事長率いる検察は「動かざること山の如し」、市民団体は告発の時から不起訴を待っていたかのように、舞台を検察審査会へと移していく。
その間、森本学園に集まった世間の耳目は、加算学園の獣医学部許認可問題へと移っていた。これは、52年間認められていなかった獣医学部の新設が国家戦略特区において申請された際、大学の理事長が首相の「腹心の友」であったことから、審査の過程で「加算学園ありき」の特別な便宜が図られたのではないか、という疑惑だ。
ムリを通せばドラマが生まれる。
森本問題で籠池劇場が展開されたように、加算問題でも多くのドラマが生まれた。
読売新聞が、すでに退職した文部科学省の事務次官が出会い系バーに出入りしていたことを記事にし、前川劇場が展開された。
これは、事件として取り上げられたこと自体が、事件であった。なぜなら、すでに離職済みで在野から歯に衣を着せずに加算学園問題に言及する前事務次官の前川喜平という一個人の行動を、日本の三大紙のひとつである読売新聞が、明らかに政権の意を酌んで監視し、タイミングを計り、このような三流週刊誌レベルの内容で記事にしたのだから。
権力の監視機能を担うべき新聞というメディアにとっての自殺とも呼べる所業は全国民を驚かせたが、当の前川喜平は悪びれることもなく、
「そこで出会った女性を通して女性の貧困と子供の貧困が通じていることがわかった。実地の調査の中で学べることが多く、ああいうところに出入りしたのは意義があった」と述べ、こちらの発言も全国民を驚かせた。
とても本気で弁明しているとは思えないものだったからである。
ラマは歌舞伎町に詳しい友人の案内で、記事の出会い系バーを訪ねてみることにした。
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