第6話 北の魔女5

 共に……暮らす……?

 口内に残る不快感が一瞬吹き飛ぶほど、思考が停止した。


「どうじゃ?」

「え、あ――そっ……スね……」

「毎晩添い寝してやろう」


 一瞬考えかけたが、ビーカーに残るレバーをミキサーにかけたみたいな色の液体を見て、素に戻った。

 いや、いかんいかん、この謎の状況に騙されてはいけない。俺は今からこのモップ2号で仕事を……。

 と横を見たら、魔女がいつの間にか愛用道具を握っていた。

 反射的に手を伸ばすも、それをひょいとかわす魔女の口は止まらない。


「……で、じゃ。おぬしには炊事洗濯全般をやってもらう。わらわは多忙じゃからの。ん? それにしては対価が少なすぎる? わらわの可愛らしさを見よ、札風呂に浸かりながら一生遊んで暮らせるほどの愛くるしさじゃ」


 モップ2号をマイクのように持ち、ふふんと胸を張る魔女。大演説さながら、そこらじゅうを歩き回っている。


「不服そうな顔じゃな。何、ここでの生活はすぐに慣れる。朝濡れたタオルを振り回すとカチカチになるアレができるぞ?」

「というかなんで俺なんですか。炊事洗濯くらいなら他の人でも……」

「理由なら小屋で説明する。なにせ説明するには色々な準備が必要じゃからのう」

「いやこれから仕事なんで……その、モップ返してくれませんか」

「おーっと手が滑った」


 ぶん、と小屋の向こうに投げられるモップ2号。

 拾いに行くついでに小屋に寄らんか? とでも言いたげな顔をする魔女。


「……話だけ聞いたら仕事戻っていいですか?」

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