第4話

 沈む夕陽を眺めながら、たまにはこんな日があってもいいかと俺は思った。なあ、永田?


「え、なになに? どんな日?」


 フッ。言わせんな。


「いやいや、そこは言ってもらわんと分からんがな」


 ああん? ぶっ殺されてえのか!


「何でいきなりキレてんねん。情緒大丈夫か?」


 じゃあ言うけどな。言っちゃいますけどねえ!


「はよ言えや」


 小説のネタが何も浮かばない日があってもいいかとな……ぐふっ……オエェ。


「死にそうやんけ。なんや、ネタ浮かばないだけで死ぬんか自分」


 当然だ。俺は小説に命を……猪木を懸けているからな。


「なんやねん猪木って」


 それはおまえ、アントニオだろ。


「そういう疑問やないわ。つまり命は懸けとらんのやな?」


 ちょっと命は言い過ぎかと思ってな。猪木にした。


「意味が分からんわ」


 さすがにかっこよすぎか?


「なんでやねん。命懸けてるって方がかっこええやろ」


 おお永田! 嫉妬とは見苦しい!(両手を大仰に広げる)


「唐突なミュージカル調!」


 素直になれ。貴様も俺のようにモテモテになりたいんだろ?


「あのな、まずお前はモテモテやないし、俺は一人にモテればそれでええんや」


 ……うわ、さっむ。これには俺もドン引きです。なんだいなんだい、一人だけいいカッコしやがって。先生に言うからな。


「先生に言うことちゃうやろ」


 せんせーい。永田くんがー。


「待てや」


 おしっこ漏らしてまーす!


「漏らしてへんわ!」


 本当だろうな。ならチン(バキュン!)出してみろ。


「しゃあないな……って出すかいボケ!」


 ふん、一握りの理性は残っているようだな。


「なんやねん人を怪物みたいに」


 分かっている。まだ人間の心があるうちに殺してくれと言うんだろう?


「言わへん言わへん」


 だが待ってほしい。それが人にものを頼む時の態度か?


「いや話を聞け」


 ——それが人にものを頼む時の態度か?


「えっ? ああ……聞いてください?」


 たわけ! お願いします御主人様、だろうが!


「知るか!」


 貴様、メイドを知らんのか? もしやメイド喫茶童貞か?


「それはあるねん。1回だけな」


 は? おまえ……! 裏切ったな!?


「なんや行ったことないんかい」


 当たり前だ。あんな破廉恥な場所、軽々しく行けるか! ……それで、おっぱいは揉めたのか?


「破廉恥なのはおまえの思考やー!」


 なんだ、揉めなかったのか。やはりチキンだな。


「いや、そういうとこちゃうから……」


 よし、すぐに俺を連れて行け。揉み方を教えてやる。


「絶対出禁になる奴やん」


 出禁を恐れていては何もデキン! なんてな!


「……帰るわ。ほな部室のカギ頼むで」


 それが人にものを頼む態度か?


「やかましいわ」


 あー。

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