いざ、地族の地、下界へ
第2話
下界には、見たこともない風景が広がっているんだぞ。と、グランド特派員の父、ゴルティファから散々自慢され続けたティラは、地上に憧れ、父さんと同じように、グランド特派員になり、絶対に下界へ行ってやる。と、常々思っていた。
そのためティラは現在、グランドダウン資格を取るために、グランド学園に通う三年生だ。
学校を卒業し、試験に合格しなければ、地上へ降りることは出来ない。
それが、ティラの住む浮島、オアルゴ国の決まり事だ。
そう、聞かされ続けていた。
しかし、例外があったのだ。
それを知ったのは、今年の春。親友のリノアからだった。
グランド学園に通う三年生の生徒で、成績が学年TOP3に入る者であれば、グランド特派員の任務の見学として、地上への同行が許されるというのだ。
成績TOP5に入る者なら知り得た情報だったのだが、ティラは生憎TOP7。若干順位が足りなかった。
ティラはその資格を得るために、必死に頑張った。
毎日自主トレで体を鍛え、夜は遅くまで机にかじり付き地上の知識を叩き込んだ。
その甲斐あってティラは、前期、学年TOP2という輝かしい成績を取ることが出来た。
「ティラ、おめでとう。これで念願の下界へ行けるわね」
「リノア。ありがとう。リノアが協力してくれたお陰だよ」
彼女には、分からないところを教わったり、効率のいい勉強方法などを伝授して貰ったりと、色々とお世話になっていた。
なんと言ってもリノアは学年TOPの成績で、一年生から一位をずっとキープしている優等生。それに加えて容姿端麗で、この学園のマドンナ的存在なのだ。
その彼女が居てくれたからこそ、わたしはここまで頑張れたのだと思っている。
「ティラが頑張ったからでしょ。私は少しのアドバイスをしただけだわ」
「大好きだよ。リノア!」
ティラは嬉しくて、リノアをギュッと抱きしめた。
一緒に喜べる者が居るというのは本当に嬉しい。
「良かったわね」
「うん。それで、リノアはどうするの? 下界へ行くの?」
「そうね。行こうかしら。アルゴ特派員が誘って下さっているの。どうやら、ティラのパパさんが、ティラを連れて行くことを聞き付けたらしいのよね」
リノアは、そう言うと苦笑しながら肩を竦めた。
アルゴ特派員とは、父さんの幼なじみで、父さんとは特派員のライバルでもある男だ。
二人は、何かにつけて張り合う傾向があり、面倒くさい間柄だ。
それに測らずとも巻き込まれているリノアには、お気の毒としか言いようがない。
「なんか、ごめんね」
「気にしないで。これはチャンスだから。グランド特派員の許可がないと、いくら私が行きたいと言っても叶わないし。有難いことよ」
「そっか。分かった。それじゃあ、帰って来たら、いっぱい話しようね」
「そうね。たくさん語り合いましょう」
こうしてティラは、夏休みに、父さんと共に、地上へと降りることとなったのだ。
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