天族の理

第1話

この世界には、二種類の人間がいる。


一種は、地上に住む民、地族ちぞく


もう一種は我々、天空に住む、天族あまぞくである。


天族は背中に羽が生えた、成人でも、地族の半分程の大きさにしかならない小型の人種で、空を浮かぶ、いくつかの浮島のうえで暮らしている。


しかし、地族の者達は、天族は大昔に絶滅したと考えていた。


何故なら、浮島は地族の者達には見ることが出来ないからである。


そのため、彼らは浮島の存在を知らない。


浮島は大昔、天族の者が地族との生存争いを避けるため、空へ上る船を造ろうと考えたことから出来た人工的なもので、島が浮く原理は、空気より軽い大きな鉱石が、幾つも島の中心に埋め込まれているからである。


その鉱石は、現在の地上ではもう存在せず、地族達の中では幻の鉱石だと言われている。


そのため彼らは書籍の中でしか確認したことがないだろう。


その書籍の中には、大昔、天族が暮らしていたことが分かる文献も発見されていて、小さな天族が暮らしていた遺跡なども発見されていている。


彼ら達からすれば、天族は遙か昔に存在した種族なのだと思いを馳せるのだろうが、現在進行形で私達はこの世に存在するのだ。


古く昔からずっと気付かれずに、ひっそりと。


しかし、今はもう、浮島の鉱物だけでは、生活が不十分になっていた。


そのため、地上から物資を調達するため、グランド特派員と言われる者達を設けている。


そして、その養成にも国は力を入れているのだ。


グランド特派員になるためには【グランドダウン資格】が必要で、その試験に合格しなければ、地上に降りることは出来ない。


その試験を受けるには、国が定めたグランド学園に三年間通い卒業すると、国家資格であるグランドダウン資格を受ける権利が得られるが、有効期限は二年間。その間に、四回の試験を受けるチャンスがある。


それを逃すと、再び六ヶ月の講習の後、権利が復活するが、有効期限は一年間。


その二度のチャンスも逃すと、グランドダウン資格を得ることは出来なくなる。


計六回のチャンスのいずれかに合格し資格を得ると、晴れてグランド特派員となれるのだ。


しかし、資格は一生ものではなく、三年ごとに講習と筆記試験を受け、合格した者だけが更新となるのだ。


試験は厳しいもので、知力、体力共に必要で、合格者は毎年三割にも満たない難易度の高いものになっている。


そのため学園では、地上の知識を徹底的に学び、護身術や武芸などを、いくつか取得しなければならない。


これほどに難しいのは、先程も言った通り天族が地族の半分ほどの大きさしかないためだ。


知識や力が備わっていなければ、地上はとても危険な所なのだ。


天族は地族に正体を明かすことを禁じられており、地上に降りれば、終始子供の振りで過ごさなければならない。


そのため、ある程度童顔でなければ、特派員は長く続けられないと言われている。

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