第14話

次の日、目を覚ましたと聞いた咲希と愛梨と彩音が、お見舞いにやってきた。


三人とも泣きそうな顔で病室に入って来ると、わたしと目が会った瞬間、咲希と愛梨は涙をポロポロと流し、彩音は泣き崩れその場でしゃがみ込んだ。


驚いて、わたしはベッドから降りると彩音を抱き起こし、咲希と愛梨の背中を摩った。


「みんな、心配かけてごめん」


わたしには、こんなに心配してくれる友達が出来ていたのだとやっと気づいた。


「わたしこそ、ごめん」


咲希が泣きながら謝った。


「なにを謝ってるのよ。咲希が謝ることなんてないでしょ」


「あるよ。こんなに思い詰めてたなんて、ちゃんと話していたらこんなことにはならなかった」


もしかして、わたしが自ら命を絶とうと思ったと勘違いしているあの夢のこと、やっぱり現実なの!?


「咲希達、勘違いしてるよね。この怪我は事故だよ」


「えっ!?」

「ウソ!?」

「ホントに!?」


三人三様に驚き涙が引っ込んだ。


「突風に煽られた、何か大きな物にぶつかったんだけど、それがなんだかわからなくて、ビルから落ちたのだと勘違いされたのよ」


「そう、なんだ」


ホッとしたように彩音が胸を撫で下ろすと、


「良かったよ」


愛梨も微笑んだ。


でも、まだ浮かない顔の咲希は、もう一度謝った。


「でも、やっぱりごめん。卯乃香には黙っていたことがあるから、ずっと悩んでいたのに言ってあげられなかったから、ちゃんと話さないといけないと思って」


そう切り出すと、咲希は北条くんのことを話し出した。


北条くんには六歳離れたお兄さんがいて、そのお兄さんの同級生である彼女さんを北条くんは好きだったそうなのだ。


でも、子供だから相手にされてなくて、この六月に二人は結婚したらしい。


結婚が決まった時期に、わたしが告白したから、きっと北条くんはOKしてくれたのだと思う。


それを聞き、あの大人の女性はお兄さんの奥さんだったのかもしれないと思った。とても嬉しそうにしていたし。


そして、咲希は中学からずっと北条くんを好きでいたそうだ。


あの夢はやっぱり現実のことだったのだ。


わたしのダメージは咲希が思うより軽いものだった。


全てわかってたものだし、浮気でもなかった。


ここまで話してくれたのだから、わたしも自分の本当の気持ちをみんなに話そうと思った。


「わたしも、みんなに謝らなくてはいけない。ずっと隠してたことがあるの」


「どういうこと?」


咲希の困惑する表情に、申し訳ない思いで話し出した。


幼い時の自分、中学の頃の自分、そして、みんなに見せていなかった自分。


本当は、歌にも自信があることも話した。お芝居だって出来ることも全部話した。


三人はとても驚いていた。


そして、北条くんとは終わりにしようと思っていたことを話した。


「黙っていてごめんなさい。もう、愛想つかされても仕方ないと思ってるから、正直に言ってね」


「なに、言ってるのよ。愛想なんかつかないわよ」


咲希は呆れたように笑った。


「これからが、本当の友達になれる第一歩だよ」


愛梨が手を差し出し握手を求める。


「そうだよ。ずっと一歩引いてたの、気づかないとでも思ってたの」


彩音がわたしの手を掴み、愛梨の手と握らずと上から二人手を覆った。


それを見て咲希もその上から両手で包み込むようにみんなの手を握る。


「みんな……ありがとう」

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