第20話
「しっかりしてるから年下からも慕われそうだけど、礼儀正しくて素直だし、案外年上からもモテそう」
「直江さん、彼氏とかいるの?」
女性が集まればほぼ100%の確率で出てくる話題、それが恋バナ。
しかしながら、5歳で出会った“プリンセス”に心奪われて以来、この場で提供できるような面白いネタはこれっぽっちもない。
「いないですよ。女の子に告白されることはあっても“彼氏”という存在とは縁遠い人生です」
遠い目で答えれば、「ふはは、人生語るには若すぎるよ!」と加藤さんが笑い声を上げ、隣の田中さんは楽しそうに目を輝かせる。
「恋愛したくないとかそういうわけではない?」
「え?まあ、興味が全くないわけでは……」
「じゃあ、年上も視野に入れて見なよ〜!」
「年上、ですか?」
キョトンと見つめ返すと、マスカラで綺麗にコーティングされたまつ毛がうっとりと上を向く。
「直江さん、普通の男なんかよりずっと格好いいからさぁ?同世代の男性は引け目感じちゃって手を出せないんだと思うんだよねぇ」
「いやぁ、そんないい理由じゃ……」
「でも、包容力のある年上男性ならそういう引け目なしで直江さんのこと大事にしてくれそうじゃない?」
早口で語られる田中さんの推察に「えっと、あの……」とたじたじ。
「甘やかされて乙女になる直江さん、絶対可愛い〜……私壁になってそれ拝む役やりたい〜」
頬に手を当てうっとり宙を見上げる彼女に困惑したまま加藤さんに助けを求めれば、「この子、妄想癖あるから放っておいて大丈夫よ」と慣れた様子であしらっていた。
……すごい、大人の女性だ。尊敬。
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