第19話
「お詫びにランチはご馳走!あとでITの子に請求するから好きなもの食べて!」と両手を広げる加藤さん。
できる女の風貌からは予想できない戯けた動きにクスクス笑いながら「わー、いいんですか?ありがとうございます」とお礼を言った。
注文したのはさっぱりとした油淋鶏うどん。限定メニューとして食堂の入り口にポスターが貼られていたものだ。
「直江さん、実はミーハーだな?」
「えへへ、実は。限定とかの文字に弱いタイプです」
肩をすくめると、にこーっと笑った田中さんが「なんか直江さんってさ……」と口を開く。
「気さくで可愛い子だよね。最初来た時はびっくりする美人さんでどう接すればいいんだろうって思ってたんだけど」
「そう!私も思ってたー!話してみたらすごく話しやすいし可愛い」
「え、いや……」
慣れない方面での誉め殺しに反応に困る。オドオドしていればその仕草さえも「可愛い」と微笑ましく見つめられてしまう。
「か、揶揄わないでください、こんな男女が可愛いわけ……」
恥ずかしくて、顔を隠しながら否定すれば、「あれ?可愛いって言われるの嫌?」と問われ……
「えっと……いや。言われ慣れないので死ぬほど恥ずかしいですけど、……割と嬉しいです」
かああと顔を熱くしながら素直な気持ちを口にすると、目の前の二人は目尻を下げてニンマリ笑った。
「ふふ、顔真っ赤。やっぱり可愛い、直江さん」
「ギャップも相まってキュン死」
今までの人生、年上と接すること自体多くはなかった。
同世代の中ではまとめ役に徹することが多く、加えて幼い頃から担ってきたお子ちゃま響くんのお世話係という任務もあり。
こうやって年上から可愛がられるという状況に慣れてないから、すごくくすぐったくて恥ずかしいけれど……同じくらい嬉しくて心地いい。
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