第17話
「襲われないように気をつけなよ?私はそばにいられないから」
響のナイト役として、これでも一応心配はしている。いつものように拒否できない状況でお姉様方に良いようにされてしまうのではないかって。
しかし響は「俺のことなんだと思ってんだよ」と顔を顰め、徐に私の顔を覗き込む。
「……っ、」
「俺も一応男の子なので。いざとなったら自分の身は自分で守れます」
透き通るような白い肌、色素の薄い瞳。見慣れていても時々息を呑んでしまうような美しい顔が私の視界を占めている。
あまりに突然な至近距離に肩を引き上げて固まる私。それを見て響は嘲笑うようにフッと息を漏らす。
「でも、ま。多少のストレスは我慢するのが社会人の一歩だよな」
「……ちょ、ひび、き」
顔が離れたと思えばすかさず掬い上げられる右手。そのまま口元まで持っていかれ、手首に彼の息が当たる。
「はぁ、涼の匂い」
「だから、匂い嗅ぐの嫌だって」
「ストレス社会の俺に。慈善事業だと思って癒しくれよ」
「……癒し、って」
響はやっぱりおかしい。普通じゃない。だって普通はこんなのが癒しになるわけがない。
男の人は可愛くて明るい……例えばさっき響に群がっていたような女性たちに癒しを求めるものであって、決して私みたいな男女で癒しを摂取できるはずがないのに。
「なんでこんなに甘い匂いすんだろ」
「なにそれ……」
はぁ、と安心しきったため息を吐かれれば、恥ずかしいけど、嫌な気はしない……かも?
「帰り待ってろよ?一緒帰ろ」
「う、うん」
「明日は昼一緒がいい。一人で飯寂しい」
「分かった」
別れ際、バサバサっと雑に頭を撫でられる。
長い髪を結うようなおしとやかな女性なら、こんな風に触れられることもないのだろうと思えば、短い髪に誇りが持てた。
「じゃ」と片手を上げて自分の部署に戻っていく広い背中。
見慣れないスーツ姿に高鳴る胸は……どうしようもなく奴の虜で嫌になった。
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