第14話

夏休み期間を利用して申し込んだインターンシップ。幸か不幸か、響も同じ会社のインターンシップを申し込んでいた。


配属部署が違うので頻繁に顔を合わせるわけではないが、出社退社は一緒だし、昼食だって一緒に取りたがる。


きっと女避けに使われているのだろうけれど、ここは学校ではない。好きな時間に好きなメンバーと生活を共にできる学生の感覚は適合しない場所だ。


勤務時間外ならまだしも、この場で声をかけられてどう反応するべきか……。


これから私は自分の部署に戻り、頼まれた仕事をこなし、お昼休憩に入ったら職場の先輩に食堂を案内してもらう予定で……



「涼!なぁ、涼ってば」


「……」



そんな……下の名前で何度も何度も。周りの女性たちもどういう関係なのか、と不思議そうな顔をしている。


このまま無視して逃げる方法もあったが、あいにく私はあいつの“ナイト”。本能的にあいつを無視することはできないのだ。



「お疲れさま、真壁くん」



誰からも嫌われないことを念頭においた笑顔で彼らの元へ近づけば、響の前方にいた女性が道を開けた。


私をまじまじと見ながら「響くんのお友達?」とやや上擦った声を上げるその人に響より先に口を開く。



「こんにちは、真壁くんと同じ大学の直江です。経営企画課でインターンさせていただいてます」



丁寧に挨拶すれば、「そうなんだー……」と含みのある返し。


響との関係性を案じるような敵意のある感じではない。寧ろそんな反応をされた方が個人的には嬉しさを感じるかも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る