第9話
私には彼のフェロモンが効かない、なんて大嘘。
触れられれば、心臓が暴れ出して体が熱ってしまうし、響に女として意識されていないことがいちいち悲しくて胸が苦しくなるし。
でも、そういうの全部、隠してる。
響のそばにいたいから。
女の子から守る、という
……いつまでも、彼に恋していたいから。
この“オトメゴコロ”が、響に伝わることはたぶん一生ないのだろう。——とはいえ、
「ふぁぁ……、眠い。ちょっと寝るわ」
「……」
食欲が満たされて睡眠欲が遊びに来たらしいお子ちゃま響くんは、私の部屋に入るなり我が物顔でベッドに横になる。
「んー……、涼の匂いする」
「嗅ぐな」
「俺、涼の匂い好きなんだよな、落ち着く。香水作らねぇ?」
「作らねぇ」
電気を避けるように目元に右腕を乗せ、暑いのか左手をTシャツに差し込むから美しい腹筋がチラリ。
「……」
ごくり、思わず生唾を飲み込んで激しく自己嫌悪した。変態親父か、私は……
これでは鼻血ブー女子たちと変わらないじゃないか。
これでも一応、響の隣にいる者として最低限のプライドはある。響は私にとって“プリンセス”。薄汚れた性の対象になど絶対にしてはならない、崇高な生き物だ。
(見ない見ない、私の煩悩退散してぇぇ……)
彼の腹筋から目を逸らして、何か別のもので気を紛らせようとしたのだが、
「涼、こっち来て」
「え?」
「ん、ここ」
「……」
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