第5話

「涼さま、今日も素敵」


「いつも隣で響くんを守ってるの本当、推せる……」



ああ、今日もまた言いたい放題言われてる。


背後から向けられる視線にうんざりしながら響の隣に並べば、「何、部活行くんじゃなかったの?」と嫌味を言われた。



「……誰のせいで」


「ふっ、嫌なら放っておけば?俺に女が寄って来ても、お前には関係ないもんなぁ?」


「……」



100%の自信を顔にぶら下げて私を見下ろす響はいつからこんなに性格が悪くなったのか。


顔も心も天使だったあの頃の彼が恋しい。



「……ハンバーガー、食べたいんでしょ?」


「ああ」


「じゃ、さっさと行って帰るよ?あそこのバイト、女子ばっかだから危険すぎ」



腕を掴んでズンズンと歩き出すと、頭上から「大丈夫。涼が守ってくれるから」とお決まりのセリフが降ってきた。


これが彼の危機意識が一向に向上しない絶対的理由。分かっているのに結局放っておけない私が出来ることなんて、彼の手のひらの上で踊らされ続けることくらいだ。



「ちょっろいなぁ、涼ちゃん」


「……」



ご機嫌に私を馬鹿にする響がボンボンと頭の上で手のひらをバウンドさせる。腹が立つのに、楽しそうな彼を見れば胸が弾んでしまう私は本当にどうしようもなかった。



そうだよ、ちょろいよ。ちょろすぎるよ。だって……



君に出会ったあの日から、私の世界は真壁響まかべひびきを中心に回っているんだから。




「今日も素敵だったね。二人の王子」




背後から微かに届いた女の子の声に反論するなら、「女の私に“王子”って……」とかそんなことではない。



私は王子なんかじゃない。私は……、



——響を守る、唯一無二のナイトだ。

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