十二話 迷宮の話
街の名前はロンドミア。街の北には美しい湖があり、湖畔には貴族や富豪の別荘が並んでいるらしい。湖で取れる魚や甲殻類などの質がいいとか、騎士団が常駐し、周囲の魔物を駆除しているとか、そんな話があった。
イーサンさんは早速商談に向かうらしい。依頼完了の書類を用意してこちらに渡す際、ワイバーンはさすがにイレギュラーなので報酬に色をつけたと言っていた。
ギルドに向かい、依頼の完了報告をする。ついでにこちらのギルドにもギルド証の控えを作成しておいた。リアナの分も。
素材の窓口に行ってワイバーンを持ってきたと伝える。流石に建物に入りきらないので、訓練場に使われている空き地に置いてくれと言われた。まるまる持ってくる輩は珍しいらしい。
その後、せっかくなので湖で取れる食材を使った料理を食べに行った。魚介類は久々だったので舌が喜んだ。リアナも表情を緩ませていた。
せっかくなので湖を見に行こうかと思ったが、下手に貴族に目をつけられてもいいことはないのでやめておいた。
イースタスに転移し、冒険者ギルドの受付に向かう。ギルド証の確認を終えた職員は、おそらくすぐに俺のランクはプラチナに上がり、リアナはゴールドになるだろうと言った。それまで一旦依頼の紹介は止めるので、常設依頼を覗くように伝えられた。
常設依頼のゴールド相当の箇所にはキマイラ。プラチナ相当の箇所にはマンティコアが追加で貼り出されていた。マンティコアのところにはプラチナでも危険度が高い旨が記載されている。
氷結魔法を使うらしいから耐性が必要かな。減速や脆弱は魔法耐性強化で対応しよう。相手が使う加速は解呪でなんとかならないかな。いや、もし封印が効けばマンティコアは噛みつきと引っ掻き、毒針だけになるのか。効けばだが。
毒針はリアナの装備ならなんとかなるだろうが、俺の装備で防げるのか少し心配だ。頑強をかけるから大丈夫かもだが。
念の為、この前の店に魔導書を買いに行く。前と同じエルフのお姉さんがいた。
「おかげでキマイラやワイバーンのブレスを防げました。ありがとうございます」
「それはよかったです。主に夜にご使用される方もご満足いただけましたか?」
ナチュラルにセクハラしてきたぞ。スルーしよう。
「今日は氷結耐性の魔導書を探しにきました。後は迷宮で便利な魔法があればお聞きしたいです」
「氷結耐性はいくつか在庫がございますか、想定されているのはマンティコアでしょうか?」
「そうですね」
「マンティコア相当となるとただいま売り切れとなっております。需要が高まってまして。アイスドレイク相当でしたら在庫はございますが。そちらでもそれなりの効果は見込めるかと思います。魔法耐性強化も合わせれば氷結魔法の対策には十分かと」
「ではそれでお願いします」
「後は迷宮で便利な魔法ですか」
女性は少し考え込んでいる。
「落とし穴などがございますので浮遊、装備品を腐食させてくる罠もございますので劣化防止、電流を流す罠もございますので雷電耐性、他には・・・」
「罠ってそんなにあるんですか」
「色々ございますね。他には生命力吸収や魔力吸収、封印、減速、脆弱、麻痺、毒、盲目、混乱、石化、幻惑。空腹に転移。私が把握しきれていないものもあるかと思います」
「うーん、迷宮はやめておいた方がいいかな。特に封印が致命的だ。罠探知とかそんな魔法はないんですか?」
「在庫にはございませんね。三眼族であれば魔眼で未来視を行い罠を回避したり、ハーフリングであれば生来の斥候技能の高さにより対応するとか。種族に関係なく技能に優れた者は対策できるようですがお心当たりは」
「特にないですね」
「後は捨て値で売られている奴隷を買い、先行させるなどありますが」
「外道じゃないですか」
「よく行われているらしいですよ」
思っていた以上に酷い世界だな。
「そういえば封印対策であれば、魔法を封印された時の為に解呪のスクロールを用意しておくなどがありましたね。道具は使用できますから」
「あ、それは迷宮以外でも使う事があるかもですし、買っておいた方が良いですね。ありがとうございます」
「後は変わり種としては、幸運の魔法というものもございますね。幸運に恵まれるので、たまたま運が良く罠が発動しなかったりするかもです。主にギャンブラーに好まれる魔法ですね」
「地味に有用そうなのがアレですね。ちょっと買いたいです」
「ではそれもご用意しますね」
結局、氷結耐性、幸運の魔法を習得した。幸運は常時発動しておくことにした。その後スクロール専門店で解呪のスクロールを買った。これはポケットに入れておく。店を出て宿に転移しようとすると、ちょうど目の前で誰かが倒れた。目深にフードを被っている。急いで抱き起こし、快癒や解毒や解呪を試みる。ん?何か呟いている。
「…た」
「ん?」
「おなかすいた」
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