三話 貰い物 依頼受注


 朝、鐘の音で目が覚めた。キャンプ場で目が覚めるかとも思ったのだが。窓を開けると心地よい風が流れる。


 鐘が鳴ったという事は朝食か。食堂に向かう。ミードがジュースに変わった以外はあまり変わらなかった。


 部屋に戻り、袋を取り出す。中に何が入っているか調べよう。まずはお金が入った袋。金貨以外と混ざっちゃってるから後で入れ物を買って別けないとな。他には何があるかな?手を突っ込むと袋の大きさ以上に大きなものまで入っているように感じる。これどうやって取り出すんだ?掴んで引っ張ってみたら取り出せた。デカい、重い。思わずたたらを踏む。


 仄かに薄緑色の光を放つ、白銀の全身鎧だ。これが入ってたってことは、この袋は魔道具なのか。あ、そうだ鎧を鑑定してみよう。


◾️精霊王のミスリルフルプレート

等級:レジェンダリー(伝説級)

付与:身体強化、魔法耐性、治癒促進、衝撃吸収、状態異常耐性、サイズ補正、形状変化、自動修復、自動装着


 なんだこれは、なんでこんなものが入ってるんだ?あの赤髪の人は何者だ?魔導書や金貨をほいほい渡してくるからおかしいとは思ったが、これはおかしすぎる。


 見た目よりは比較的軽いと思ったのはミスリルだからか。まあそれでも重かったが。ミスリルといえば軽くて鋼鉄より強靭とかいうチート金属だ。


 他にも取り出してみる。


◾️魅惑の白銀絹のパンティー

等級:レア(希少品)

付与:魅了、性感増大


 着けたまま事に及ぶのか?ってかなんでこんなもの入れてんだよ!これはこれでおかしいわ!思わず床に叩きつけた。


◾️強撃のエボニーエルダートレントロッド

等級:エピック(英雄級)

付与:魔力回復促進、魔法行使力強化、自動修復

特記:打撃時、魔力を破壊力に変換することが可能


 これは使えそうだな。使おう。鎧の方もサイズ補正とか付いてたから使えるかもしれないが、鎧はなぁ。探してみたらランクがレアの黒い神官服のようなローブがあったので着けておく。こちらもサイズ補正に、防御力上昇の効果なんかが付いている。


 他にもいろいろとあったが状態異常耐性のついた指輪と魔法耐性強化のついたネックレスだけつけておく。他に色々あった変なものの一つとしては、剣術強化の付与が付いたメイスなんてものもあった。剣術がメイスに生かせるんだろうか。二刀流でもするのか。


 まだ鑑定していないものが入っているが、疲れたので一旦ここまでにする。


 袋の中には白金貨や魔銀貨が入った袋なんかもあった。白金はプラチナ、魔銀はミスリルだ。金貨よりランクが上そうだな。あの人の資産総額はいくらなんだろう。ホイホイ渡しすぎではないか?


 それなりの贅沢な水準で暮らしても死ぬまで持つかもしれない。だがせっかくのファンタジーなのだしあの人にも冒険者を勧められたのでしばらく試してみよう。


 冒険者ギルドに行くのは昼以降だからまだ時間があるな。服や下着、桶、他にも必要なものがあれば買うか。


 カウンターにいたおばちゃんに鍵を渡して外に出る。ついでに服屋や雑貨屋などの大体の位置を聞いた。


 街をぶらつく。服屋を見つけたので中に入って二、三着の上下と下着を買う。次は雑貨屋に向かう。桶、コップ、他にも色々と買う。ついでに聞いてみたら白金貨は金貨十枚、魔銀貨は白金貨十枚らしい。思わず袋の中に入っていたそれらを思い出し震えた。


 外に出て空を見ると、まだ昼には少し早い。どうするかな。当てもなく街をぶらつくと、神殿のようなものがあった。中に入ると神官のような格好をした男性がいたので声をかけてみる。


「すいません。ここは何を祀っている神殿なんですか?」


「主に商売の神だね。他の神の像もあるが。君は他の街から来た神官かな?」


「いえ、冒険者です」


「そうか、祭壇は自由に使ってもらって構わないよ。君は誰を信仰しているんだい?」


「いえ、特に信仰している方はいないですね。興味があったから寄ってみただけです」


「それは珍しい。冒険者なら武神や戦神がオススメかな。魔神もいいかもしれないね。多少なりとも加護がある筈だ」


「そうなんですね。参考にしてみます。ありがとうございました」


 礼を言って祭壇らしきところへ向かう。中央に立っているのが商売の神かな。他の神はどれがそれなのか聞いてなかったな。他にも跪いて祈りを捧げている参拝客がいた。真似をして跪いて目を閉じる。今まで一番世話になったのはあの赤髪の男性なので、感謝の念を送っておこう。


「ん、気のせいか」


 何か聞こえたような気がしてあたりを見るが、特に変わりはなかった。

 

 教会を出て空を見ると、ちょうど真昼になったようだ。冒険者ギルドに向かう。ギルドの中に入ると、話し声が聞こえる。


「どうも西の方でキマイラが出たらしいぜ」


「マジか」


「迷宮から湧いたのかね。最近はあちこちに迷宮が増えているらしいし物騒だな」


「レベルの低い迷宮で運良くお宝を手に入れられでもすりゃ大儲けだがな」


 キマイラか。俺でも倒せるとあの人は言っていたが。もう少し話を聞いてみたかったが受付に向かい整理券を渡す。しばらくしたら呼ばれたので向かうと、昨日と同じ女性がいた。


「ユウト様ですね。今日は装いが違うのですね。ギルド証の準備はできております。こちらになります」


 女性が魔法陣の描かれた2枚の銀色のプレートを取り出す。


「ランクはシルバーとなりました。オークやハーピー等の討伐依頼や、護衛依頼などが受けられるようになります。初めはそれよりもレベルが低い魔物を相手にして経験を積んでほしいですが」


「わかりました」


「では、こちらに一滴血を垂らして下さい。模様の中央ですね」


 言われた通りにして見ると、プレートが光を放った。もう一枚にも血を垂らすと、同じく光る。


「このプレートには達成した以来のランクと数、依頼の受注状況、買い取った素材の総額、口座の残高などが記録されています。他にも色々とありますが特に気にされなくて大丈夫です。一枚は控えとして当ギルドで保管します。拠点を移動される場合は、移動先でプレートを渡し、そちらのギルド用の控えを作成してもらってください。そうすれば再発行の際に手間が省けるかと思います。控えの作成と再発行には1000マールかかります。あ、ユウト様は転移が使えましたね。転移できる範囲であれば必要ないかもしれません」


「そうですね」


「それと、このプレートはユウト様以外が触れても光りませんのでご安心ください。また、プレートは魔力を流すと遠隔で情報を同期します。なのでもし別のギルドで控えを作成しても情報に齟齬は生まれませんのでご安心ください」


 よく出来たシステムだな。そういえば口座といっていたが、お金を預けておいて引き出せるんだな。昨日話していたような気もする。銀行業も兼ねているのか。冒険者以外の人はどうしてるんだろう。冒険者以外のギルドとかあれば、そっちでも似たようなシステムはありそうな気もする。


「説明は以上です。早速依頼を受けていかれますか? 初依頼ですので、できればシルバーの中でも比較的簡単な依頼を受けていただきたいです」


「はい、それでかまいません」


「では確認してまいりますので、少々お待ちください」


 しばらく待つと帰ってきたので話を聞く。


「南に行くと沼地があるのですが、そこにリザードマンが生息しています。そこで最低5体を討伐してくるという依頼です。報酬は2500マールとなります。討伐証明部位は素材の中で尻尾など、単一の個体と確認できる箇所となります。後は魔石ですね」


「魔石ですか?」


「心臓の近くにあることが多い宝石のような物です。魔道具や錬金術の材料、魔力が付与されたインクなどの材料になります。武具へのエンチャントにも使ったりしますね。魔物はだいたい魔石が一番高額で買い取られます」


 それからリザードマンの生態の話を聞いた。他にはリザードマン以外に生息している魔物や、採取できる素材の話、ぬかるみなどの不利な地形の話などの注意事項を聞いた。他にもあったかな。とりあえず簡単な地図を受け取り、出発する。いやその前に準備だな。

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