第11話

経理課のある5階でエレベーターを降りると、前から歩いてきた女性と目が合った。




「あ!」という声とともに、笑顔でこちらに近づいてきた女性社員の2人組。




「三船くーん!なんでこんなとこいるのぉー?」



「お疲れ様でーす。経理に用事がありまして。」




親しげに話しかけてくれるけど、まずいまずい、誰だっけ?



社内規定ギリギリの髪色のおしゃれパーマを見れば、恐らく内勤の総務課の先輩だとは思う。




「三船くん、先月も営業成績トップだったんでしょー?」



「すっごぉーい!」



詳しいな。こりゃ、営業課に内通者ありだな。



こえー、ハイエナ女子に食われないように気をつけよう。



うちの部署は会社の花形って言われるようなところだし、自分が女性社員からロックオンされていることは自覚してる。




「ありがとうございまーす!

俺、優秀なんですよねー、とか言ってたまたまですよ。」




「あはは、謙遜しなくていいよぉ〜」




親しくない人とも適当に話を合わせて、ヘラヘラ笑っとく営業テクを使いながら、心の中では早く経理課行かせろ、と抗議してる。




経理課はこの廊下を真っ直ぐに行って角を曲がったとこ。



…あ。




行き先に目を向ければ、俺の想い人が汚いものを見るようにこちらを睨んでいた。



…うわ、嫌われてんなぁ…やっぱ。

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