第10話
「三船、愛しの結月ちゃんからの贈り物。」
会議室での打ち合わせを終えて、執務室に戻ると、意地の悪い顔をしながら、伝票を渡してきた同期の今井。
それを苦笑いしながら受け取る。
パラパラと伝票をめくれば、少し丸い綺麗な字で「訂正印要!」っと書かれた付箋が貼られていて。
根拠となる会計規則の説明まで丁寧にわかりやすく書かれていた。
「うえー、いつものことながら指示細か。」
少しウンザリといった様子で言ったけど、実は嬉しくて、
真面目で几帳面な彼女の優しさにときめいたりしてる…とか、キモすぎて言えるわけない。
「偉いよね、付箋に細かい字でさぁ。経理課の門番とか言われてるけど、かなり丁寧で優しいと思うわけよ。私の結月。」
「お前のじゃねー。」
「お前のでもないだろ。」
「……。」
絶対零度の眼差しで言われて、反論できずに黙る。
さすがクールビューティ今井様。
ダークブラウンの髪は胸元下まである長いストレート。
猫みたいな目が特徴的なキツめの顔立ちは、多くの男性社員に憧れと同時に近寄りがたさも感じさせるが、中身は面倒見が良くてノリのいいやつ。
彼女は俺の想い人、藤沢結月の親友で、俺の中学からの幼馴染だ。
「俺、これから外回りだから伝票持っていってからそのまま直帰するわ。」
「はいはーい。可愛い結月にパワーもらって新規ちゃんと取ってこいよー?」
「お前、ホントうざい。」
伝票に訂正印、受付印を押しながら苦笑い。
時計をチラ見しながら、鞄を持って執務室を出た。
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