第3話

普通はね?

好きな人に偶然廊下で会ったら、天に舞うほど嬉しいはずなんだよ。




でもさ…




「三船くん、先月も営業成績トップだったんでしょー?」




「すっごぉーい!」




「ありがとうございまーす!

俺、優秀なんですよねー、とか言って。」




「あはは、ノリいい〜」




目の前で他の女の人と楽しげに話している場合は、例外だよね。




このチャラ男〜!

ヘラヘラしやがってぇ〜




見たくもない光景から目をそらすこともできず、ジッと見つめ続けると、三船の顔がこちらに向いた。




あ、やば。





「藤沢!」




片手を上げて、笑顔を見せる三船。



なんだその無防備な笑顔は!可愛すぎか!



絡まれていた女性たちに別れを告げ、こちらに向かってくる。





女の人たちはこちらを不服そうにチラッと見てからエレベーターホールに向かって踵を返した。




う、なんとなく優越感かも。



なんて、嬉しい気持ちを隠して、「何?」と素っ気なく三船に問う。




「藤沢に用事あって来たんだ。」



「ふーん、女の子にチヤホヤされるためじゃなくて?」



気持ちとは裏腹に、口から出る言葉は全くの可愛げがない。



ああ、なんでこんなことしか言えないの…?!



好きな人の前では恥ずかしくて、つい無愛想になってしまうところ、ホントに嫌すぎる…




「チヤホヤされるのは俺のせいじゃないし?」




自信満々に言うな!

自意識過剰め!…って言いたいところだけど。



別に自意識過剰ってわけじゃないから否定もできない。

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