第13話

「べ、別に!あんたに心配されるような私ではないのだよ……!」


「喋り方キモ」



吃りながら途絶え途絶えに拒絶すれば、呆れた口調で貶される。ムカつくのに、腹立たしいのに……今の私じゃ、分が悪い。



「は、早く髪の毛乾かしてきたら?」


「んー……」



遠ざけたくて言ったのに、意図に反してこちらに近づいてくる海里に参ってしまう。


気配からじーっと顔色を窺われているのが伝わって、何故だか顔が熱くなっていくから勘違いされそうで嫌だ。



「なによ、あっち行って」


「ふっ、顔赤いけど、やっぱり熱ですか?」


「……違うわよ、ふ、憤慨してるの」


「はは、なんでだよ」



おかしそうに声をあげて笑う海里。珍しい笑顔を無意識に見つめていると、口角を上げたままの彼がグッと距離を詰めてきた。



「……っ、」


「なぁ、お前……もしかしなくても意識してる?」


「なっ、は?……はぁ?!」



目を細めて意地悪に問われ、ギクリとあからさまな効果音が頭上に浮かぶ。我ながらわかりやすい反応に、海里の顔はさらに悪どく変化した。



「へぇー。ああ、そう?」


「な、なによぅ……」



見透かすような表情に落ち着かない。逃げ出したい。でも負けたくなくて、私はまた喚く。こいつの思うようにはなりたくないって、情けないけどもがくことしか出来ないんだ。



「あっち行ってよ!変態!」


「やだって言ったら?」


「なっ、殴る!」


「殴れるもんならどうぞ?」


「っ、」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る