第12話
未だ回らない頭で彼の先ほどの発言を復唱してみる。
『酔っ払って爆睡かました馬鹿をここまで誰が運んだと思ってんだ、馬鹿』
昨日の最後にある記憶は、メインのお肉料理が美味しかったなぁ〜ってのがなんとなく。
それから断片的に浮き上がってきた夢か現か分からない映像の中の私は海里に腰を支えられてどうにかこうにか歩いていて……。
「……もしかして、私昨日、レストランで寝ちゃった?」
「そう言ってる」
「で、もしかして……海里に介抱された感じ?」
「だから、ずっとそう言ってる」
「……」
至極不機嫌そうな彼はガシガシと頭をタオルで拭きながら、ベッドの縁に腰かける。
長年知っている男とはいえ、殿方と同じベッドの上にいるなんて初めての経験だ。思わず肩を揺らすと、いつも通りの気だるげな瞳がこちらを見やる。
そこらの俳優なんかと比べても引けを取らない美貌。その上、濡れ髪ときた。腹立たしいが、私はこいつの顔が案外嫌いではない。というか、多分これを嫌いな女はいないと思う。
「あー……こ、この部屋は、どうしたの?」
変に緊張してしまって視線を逸らしながら尋ねれば、少しの間のあと「もう遅かったし、お前の家遠いから部屋取った」と淡白な答えが返ってくる。
「な、なんで同じ部屋なのよ」
「三つ星ホテルだぞ?一部屋でも余ってたことが奇跡だ」
「……あ、あんたは帰ればよかったじゃない」
「鬼畜か。俺も眠かったし、……それに」
「……っ、」
ぎしり、ベッドが軋んだ。反射でそちらを見れば、思ったよりも彼の顔が近い距離にある。
「……もう、体調大丈夫なのか?」
「え?」
「相当疲れてたみたいだし、一応……ちょっと気になって」
「……」
不意に落ちた気遣いの言葉にうまく返事ができなかった。珍しく心配そうな表情で覗き込まれ、ピクッと心臓が
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