第11話
*
体を包み込むような優しいシーツの感触で目を覚ました。
「んー……!」
起き上がって伸びをするとスーッと全身に血が巡っていく。
久しぶりにこんなに寝た。やっぱり人間には睡眠って大事なのね……なんて、納得しながらもう一度ベッドに寝転ぼうと布団を持ち上げた刹那。
「……は、どこよ。ここ」
あたりの光景が見慣れないものであることに気がついた。
キングサイズのベッドの上から見渡すそこは高級そうな家具が並べられた広い部屋で、どこかのホテルの一室であることが分かる。
(へ、ちょ……なにこれ、え?)
寝ぼけた頭では冷静に現状を理解できず、頭を抱えてぐるぐる目を回していると、廊下の向こうからカタリと物音が。
「起きたか」
「……っ、」
現れたのは濡れた髪をタオルで拭う海里の姿。バスローブ姿の彼から放たれる妙な色気に目を見張る。
ホテルの一室。バスローブ姿の海里。乱れた寝具……それらが示す事実とは……?
「……へ、へ、へ、変態……っ!!」
「は?」
「やだ!獣!意識のない女に……最低!」
「……」
「乙女の純潔、返しなさいよぉぉぉ!」
「……おい、まじかよ」
ギュッと布団を抱きしめながら真っ赤な顔で怒鳴りつければ、呆れたように彼の末広二重が宙を舞う。
「ふざけんじゃねーぞ?酔っ払い」
「……は?」
「酔っ払って爆睡かました馬鹿をここまで誰が運んだと思ってんだ、馬鹿」
「ば、……ばか?」
一言の中に2回も登場した“馬鹿”。蔑むような視線の先に映るのは……私以外にいるはずもなく。
「……え?私のこと?」
「以外にいねぇだろ、馬鹿」
また重ねられた“馬鹿”は、こいつ以外には言われたことがない言葉だ。
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