第2話
後部座席に一緒に乗り込み、車が発進してからも…べったりと腕にまとわりつく私に嫌な顔もせずにされるがまま。
「匡、抱きしめて?」と甘えれば、彼は言葉のままに私を抱きしめる。
運転席と後部座席を隔てる黒いカーテンと外から見えない特殊ガラスが使われたこの車は、外界から私の身の安全を守るために父が用意したもの。
これが私の教育に良かったのか、悪かったのか…。私にとって車というものは周りから遮断された密室という認識となっていた。
「匡、…喉乾いた」
大学では絶対に放つことのない甘ったれた声を出しながらシャツをクイっと引けば、ふっと笑って「水飲みます?」と座席のポケットから取り出されたペットボトル。
分かってるくせに意地悪だ、と心の中で不満を吐いて、「…ふた開けて?」とまたシャツの裾を引っ張る。
「ふふ、お嬢は今年で何歳になったんですか?蓋開けたら自分で飲めます?」
「飲めない。」
「…そうですか、じゃあ…飲ませてやらなきゃですね?」
水の入ったペットボトルの底を上に向ければ、彼の喉仏がセクシーに唸る。
その動きをじっと見つめて大人しく彼から与えられる水分を待っていれば、外国の血の混じった青色の瞳が鈍く光って近づいた。
「…んぅ、…」
触れた唇から入ってくる冷たい液体。
火照る体に染み入って、ひんやりと口内を冷やしたというのに…
「匡…、」
「…何、まだ欲しいんですか?」
「…ん、匡が欲しい…」
ねだるように見上げて、彼の唇にこちらから口付ければ、それを合図に彼の手のひらが私の後頭部に添えられた。
せっかく冷えたのに…元より熱く火照る舌。
じわじわ、じわじわ侵食して…あっという間に身体中が熱に侵された。
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