白虎の愛に溺れ死に。
第1話
大学の講義が終わり、友人との挨拶もそこそこに校舎を飛び出した。
裏門から少し離れたいつもの場所。
車にもたれかかるように佇む長身の男を見た瞬間、一気に気分が高揚して。
「
気がついた時には男の名前を叫んでいた。
私の大声に、慣れた様子でゆっくりとこちらを向いた彼は、「お帰りなさい、
「ただいま!」と吸い寄せられるように大きな胸に抱きつけば、これまた慣れた様子で彼は私を抱きしめた。
「ほら、こんなに汗かいて…。走ってこなくても俺は逃げませんよ?」
「嘘つき。すぐ仕事が入ったとか言って私のお迎えサボるくせに」
「別にサボってるわけじゃないですよ?俺だって出来ることなら毎日莉音さんが元気に帰ってくる姿を見て安心したいところなんですけど…」
そこで言葉を止めると、胸に抱きついたまま彼を見上げる私の顔を両手で挟んで、「誰かさんの親父の人遣いが荒くてね?」とクスリと笑う。
たったそれだけでとくんと胸が弾み、彼に抱きつく腕にぎゅっと力が込もる。
「パパに言っとく。匡の仕事を私のお付きだけにしてって」
「そりゃ、ありがたいですね。親父がうんと言ってくれるのを期待しないで待ってます」
「…」
私が本気で放った言葉を、どうせ子供の戯言だ、と簡単に流す彼にむっと顔を顰めたが、
「さ、莉音さん。はやく帰りましょう?」と力強く手を引かれ、気分はすぐ元通りまで高まった。
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