第5話

「あはは!また武勇伝増えたじゃん!」



「ねー、笑い事じゃないんだけど。」




翌日のランチタイム。

腹を抱えて笑う同僚兼友人の関口茜せきぐちあかねをジロリと睨むと、目の端に浮かんだ涙を拭いながら「ごめんごめん」と繰り返す。



ねー、確実に謝る気ないやつじゃん。それ。



薄情な友人を横目にはぁと深いため息。




「いやー、本当にごめんって!笑っちゃって!」



「もういいよ、私に男運ないのなんて今に始まったことじゃないし。」



「うん、それは本当にね!」



「いや、肯定するなよ。ここは『そんなことないよ〜』って慰めるところでしょうが。」



「いやいや、そんなあからさまな嘘つけないでしょ」



クスクス笑いながら社食の唐揚げ定食にかぶりついた彼女。


ハムスターみたいに頬を膨らませて、唐揚げを胃に流し入れた彼女はお茶で口の中をリセットしてからまたニヤニヤと話し出す。



「だって聖奈から聞いたダメンズ遍歴酷すぎるんだもん。鉄板のエピソードがあって羨ましいわ」



「他人事だと思って…」



「だって他人事だもーん!」



ケラケラ笑う茜にはムカつくけど、哀れみの目を向けられたりするよりはこんなふうに笑い飛ばしてくれる方がよっぽどいい。



彼女の言うとおり、私は所謂ダメンズウォーカーというやつ。



初めて付き合った高校生の時の彼はマザコンで、何をするにも母親に確認する男だった。



ある日、彼から誘われて家に遊びに行くと「うちの子をたぶらかさないで!」と玄関先で彼のお母さんに平手打ちされた衝撃は今でも覚えている。



大学生の時に付き合ったひとつ年上の彼は超絶束縛男。



LINEはすぐに返さないと泣きスタンプが連投されるし、寝落ちして返信が遅れれば家まで来てしまう。



決まり文句は「俺のことなんてどうでもいいんだね。」って。



あの人は別れを告げた後も泣いて喚いて…挙句ストーカーにまで成り下がったから本当に大変だった。




社会人になってから合コンで出会ったのは国家公務員の人。

自意識が高くて、私のことを常に下に見てた。



思い通りにいかないとブチギレて…暴力を受けたこともあったなぁ。

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