第3話

ああ、クズなのは分かってた。分かっていて放任した私が馬鹿だったんだ。



全ての家事を押し付けられても、財布からこっそりお札を抜き取られても我慢した。



ずるずると4年も付き合った彼を逃せば、もう結婚なんてできないと思っていたから。



家族にも…友達にも…心配しなくてももうすぐ結婚するって…言っちゃってるのに…もう…、




はぁ、と大きく吐き出したため息は諦めの証。





「分かった…別れよう。」



「…、」



「部屋はどうする?契約更新月まで結構あるけど」



「…」



浮気相手に子どもがいるのならここで縋ったところで仕方がない。



それに、こんな奴と結婚するくらいなら一生結婚できない方がよっぽどマシ。



泣きも喚きもせず淡々と別れを承諾し、今後の手続きを心配する私に何故か眉を顰める彼。



「お前っていつもそうだよな」



「え?」



「お前、俺のこと好きじゃなかっただろ」



「…」



言葉が出ないのはこの状況で何故か私が責められているから。



文句も言わずただ目の前の男を見つめ続ければ、フッと自嘲気味に笑う。




「いつも文句も言わずに俺の言うこと聞いてくれてたけど、…俺はずっとお前が俺のこと本当に好きなのか分かんなかったよ。」



「…」



「お前は俺がいなくても生きていけるだろ?」



「…」




…だから、私は捨ててもいいと?

浮気したのは仕方ない…と?



文句を言わなかったのは喧嘩したくなかったから。

いつからか好きと言わなくなったのはお互い様でしょ?



朝、あんたを起こして、あんたのご飯を用意して、あんたの服を洗濯して、あんたが汚した部屋を掃除して…



あれ、これ彼女じゃなくてオカンじゃない?って何度思ったことかわからない。



そりゃあ、一人で生きていけるよ。なんなら子ども一人育てているようなもんだったんだもん。





「うん、そうだね。私も悪かったかもね」



「…っ、お、おう…」




もうなにもかも面倒くさい。

反論するのも、今後の人生を考えるのも…何もかも、だ。

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