第5話

ドラマに初めて出演したのは16歳の時。



沢山の学生役が出演する学園ドラマのその他大勢役。名前もないような役だった。




…しかし、たまたま主役の女優さんがアップで抜かれる場面の後ろにいた私が…何故かSNSで話題になってしまって…。




【奇跡のエキストラ】【百年に一人の美少女】なんて持て囃された結果…、それから次々と映像のお仕事が舞い込んだ。





モデルの時と同じ、必死に演技レッスンを受けて、自分に求められたことはやらなきゃ…って頑張ったけれど…。








「あの…せっかくお仕事いただける状況で贅沢なのは分かってますが、私はモデルのお仕事がしたくて…。」






私が子どもの頃から憧れたのは、可愛い服、かっこいい服を着て、ランウェイを颯爽と歩くモデルさん。




その幻想的な世界に魅了されてこの世界に入ったのだ。




それなのに、沢山お世話になった雑誌のお仕事を捨てる…なんて、私には出来ない。




そう思って、恐る恐る伝えたって言うのに…。






「…本当に贅沢だな?」



「…」





メガネ越しに、木嶋さんの冷たい瞳が私の言葉を一蹴する。



パタンとスケジュール帳を閉じて、はあっと大きなため息をついた木嶋さんは、言い聞かせるように真っ直ぐに私を見つめた。





「いいか、美波。雑誌モデルより、女優としてヒット作に出演する方が確実に金になる。」



「…お金、」



「お前は運良く世間に見つけてもらえて、そのビジュアルのおかげでここ数年はアニメや漫画の実写に起用してもらった。

…だが、お前の女優人生はまだまだこれからだ。」



「…、」



「出演作の評判も上々だし、上半期ブレイク女優にも選ばれた。

会社の方針ではこれからはもっと多くの映像作品に出演して、女優としての知名度を上げていくつもりだから、お前も我儘言ってないでしっかり期待に応えろよ?」




「…はい。」

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