第4話

「すみませーん、先にお伝えしていたとおり、この後予定が入っておりまして…」




申し訳なさそうに編集長に頭を下げる木嶋さんに編集長は「そうだったわね!」と慌てたように手を叩いた。




「ごめんなさいね、美波ちゃんとのおしゃべり楽しいからつい話しちゃって…」



「いえいえ、また、来月号もよろしくお願いします!」



「もちろんよぉー!次号は“美波ちゃんの全て”って題目でライフスタイルからメイク、ファッションまで美波ちゃん尽くしにさせてもらうからね!期待してるわよ、美波ちゃん!」




「はい!私に出来ることならなんでも頑張ります!」




この雑誌に移った頃からお世話になっている編集長に「期待してる」と言われて、嬉しくないわけがない。




はつらつとした返事をして、両手に作った拳を弾ませた私に、木嶋さんは「美波、次の時間迫ってるから急いで!」と声をかけた。








ーーーーー

ーーーーーー








「…美波、そろそろあの雑誌卒業しないか?」




「え…?」





次の現場への移動車の中。



スケジュール帳に視線を下ろしながら、さらりと放たれた木嶋さんの言葉。




その言葉は、私の思考回路を止めるには十分過ぎるものだった。





「…あの、それってどういう…。」




困惑の色を隠さず聞き返すと、スケジュール帳に何かを書き込みながら淡々と口を動かす木嶋さん。




「前から言ってるけど、お前に映像系のオファーが山ほど来てる。お前はそっちに集中させた方がいいんじゃないかっていうのが会社の方針だ。」



「え、でも、私…、」



「雑誌のレギュラーモデルなんてやってると、毎月のスタジオ撮影、別日でロケ撮影って、最低2日は裂かれる。そうなるとドラマや映画の撮影と時間被らないようにスケジュール調整すんの大変なんだよ。」



「…」





先ほど編集長に見せていた笑顔は見る影もなく…。真顔で説明する木嶋さんは黒縁メガネを折り曲げた指でクイッと持ち上げた。

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