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「馴初めは、二人で遊んでいた時です。兄ちゃんが初めて僕にキスをしたのが始まりで、それから僕達は兄弟という壁を超えました!」
テーブルを囲う椅子に並べられた人形たちに、僕は高らかに話す。
「兄ちゃんも僕も満更では無かったし、互いに愛し合ってたんだと思う……多分」
自身の指輪を見つめて思い出す。兄ちゃんが僕と関係を持った日々を─────。
「ねぇ、兄ちゃん……」
「ユウ……」
親の目を盗んでは、僕らはいつもキスをした。
四六時中、どこに居ようが関係なく抱き合って互いを求め合っていた。
「フフッ…兄ちゃん、キス上手いね?」
「そうか?」
「うん。もう一回してよ?」
「しょうがないなぁ……」
軽いキスから唾液を絡めたキスまで、兎に角唇が腫れるんじゃないかってぐらいにしまくった。
「ユウ…好きだ」
「兄ちゃん。僕もだよ、大好き!」
愛なんか囁きあって、毎日が幸せだった……。
「────でも。兄ちゃんは大人だからさぁ?ちゃんとしなくちゃいけなかったんだ……」
テーブルに肘を立てて頬杖つきながら、溜息混じりに呟いた。人形たちは興味なさげに話を聞いている。真ん中に置かれたバスケットに入っているロールパンを手に取り、ひと齧りした後にまた語る。
「大学で知り合った恋人と結婚だって!ハハッ、笑えるだろ?兄弟じゃあ結婚出来ないもんねー!仕方ないんだよ……うん。知ってる」
パンを頬張り途方にくれる。
「今はあっちで盛大にやってるのかなぁ……?」
テーブルに突っ伏してぼやく。
「あーあ。僕の兄ちゃんなのに!」
けれど、誰も慰めてはくれない。
当たり前だよね…人形だもの。
隣の空いている席を見つめてから、ふと顔を上げるとワイングラスに入った葡萄ジュースが目に入る。
「そうだよね。やるっきゃ無い!」
誰も認めてはくれなくても。
幸せは自分の手で掴み取らなくちゃあ。
僕はワイングラスに手を掛けた。
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