第14話 突然のお誘い
僕は今飲料の段ボールを片付けている。
それもとてもウキウキした気持ちで片付けている。
なんでかって?
それはもう、待ちに待ったあの
なんという幸福感。
なんという満足感。
どうやって話しかけたらいいのか、大真面目に考えていたけど、その作戦を使うまでもなく、あっちから声をかけてくれるなんて!
こんなことある?
無いだろ普通。
これも全て、僕がコツコツ真面目にバイトしてきたご褒美なのではないだろうか。
神様なんて意識したこと無かったけど、今日ばかりは神様に感謝したいと思います。
「おー、斗真君、補充助かるわ。ありがとう。何か良いことあったの?」
店長が段ボールを台車に乗せてくれている。
斗真「何でですか?」
店長「え?だって斗真君、口角上がってニコニコしてるよ。」
僕は慌てて両手で顔を擦る。
恥ずかしい。
無意識でニヤニヤしてたなんて、恥ずかしすぎる。
なに顔にでちゃってるんだ、僕ってやつは。
店長「斗真君がバイト中楽しそうにしてるの初めて見たぞ。俺は今日貴重なものを見てしまった気分だ。何がそんなに良いことあったのか教えろよ〜。」
斗真「や、や、何も無いですし!それに僕、ニコニコなんてしてました?気のせいでは?」
僕は必死で誤魔化した。
だって、あの人を見つけたのは僕。
絶対誰にも見せたくないし、気づかれたくない。
こんな田舎のスーパーに、あんなアイドル級の綺麗な人が来るらしいなんて店長が言いだした日には、女子たちのターゲットにされてしまうじゃないか!
そんなことは絶対ダメだ。
店員達がざわめきだせば、それが鬱陶しくなってあの人はこの店に来なくなってしまうかもしれないじゃないか。
そんなこと、僕がさせないんだ。
店長「気のせいじゃないよ、絶対。だって明らかにニコニコしながら段ボール畳んでた(笑)まぁ、でも何でもいいか。斗真君も笑える子ってわかっただけでお父さんは満足だ。」
斗真「お父さん???」
店長「俺はお前が可愛くて仕方ないんだ。素直な斗真君が。もっと同世代の子たちと弾けたり、楽しめばいいのになって思って。他のバイトの子たちは、仕事帰り一緒に帰ったり夕飯食べに行ったりしてるみたいよ。斗真君はしないの?そういうの。」
斗真「僕はそういうの興味無いです。それに、周りの子たちも僕に1ミリも興味なんて持ってないと思います。僕は今のままでも十分充実してます。」
店長「そうなの?なら良いんだけど。斗真君さ、今度夕飯一緒に付き合ってくれない?お母さんもよくお客様として来てくれてるし、怒られそうなら俺からお母さんに電話してもいいし。」
斗真「そんな気を使わないでください。僕は本当に一人で居ること、何とも思ってないので。」
店長「違うよ。全然気なんて使ってない(笑)俺が斗真君にご馳走したいだけ。これほんと。ずっと頑張ってくれてるし、いつか誘いたいなって思ってたんだ。パートさん、バイトさんとは月に一回お疲れ様会やってるけど、斗真君一度も参加したことないでしょ。だから個別でやってあげたいの。」
僕は何かモヤっとした。
一人で過ごすぼっちな僕を否定されたような卑屈な気持ちと、素直に嬉しい気持ちと。
どうしようか。
…。
でも、まだスーパーで働くしなぁ。
なんか緊張するけど…
店長「返事はすぐじゃなくていいよ(笑)困らせるつもりじゃなかったんだ。今日の斗真君になら言ってもいいかな?って思っただけだから。」
斗真「いえっ、何かすみません、僕みたいなやつに。あの、せっかくなので行きます!」
えーい、店長とは長い付き合いだ。
スーパー以外で出かけたことなんかないけど。
ないけど行ってみようじゃないか。
歳上の男性がどんな事話すのかは興味ある。
僕にとっては、バイト先の人と食事に行くなんて初体験だ。
何かこの数時間で僕の脳みそはキャパオーバーになりそ。
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