第13話 ちーちゃんと散歩

「ただいまー。」


玄関の中に入ると、ちーちゃんはクレートの中からクンクン鳴いて俺を呼んでいる。


俺は手を洗い買ってきた食材を素早く冷蔵庫にしまった。


「ちーちゃん、お待たせ。」


早くクレートを開けて欲しくて、ちーちゃんは足踏みする。

リズムよく1、2、1、2といった感じで。

これがたまらなく可愛い。

ちーちゃんは待ち切れないとき、足踏みをする。

俺はこの足踏み姿が大好きだ。


そっと扉を開けると、ちーちゃんが勢いよく飛び出してきた。

俺は思わずひっくり返る。


「ただいまー。ご飯作る前に散歩でも行こうか♪」


散歩と聞いた途端、ちーちゃんはリード置き場に走っていった。

どうやらいつの間にか覚えたらしい。


「さて、出発ですよ。」


ちーちゃんは隣でウキウキしながら歩きだす。

ちーちゃんは歩きながらしっぽが左右に軽く揺れる。

このお尻がまた可愛い。


こっちに来てから前よりも散歩が楽しくなった。

人も車も少ない、それに自然が豊富。

風が吹くたびに草の匂い、雨の匂い、田んぼを燻す匂い、いろんな匂いがちゃんとする。

景色を遮る高い建物もない。

空が広く見える。

今日も夕焼けが綺麗だ。


歩きながら、スーパーにいた店員のことを思い出した。

なんかあの子、一生懸命仕事してたな。

顔はぼんやりしか覚えてないけど、なんか応援したくなる感じ。

今どきあんなに素直そうな子いるんだな。


自分の職場に居る20代(まぁ俺もギリギリ20代か)は、なんかこう冷めてるっていうか、話しかけにくいオーラ出てんだよな…

やたらと手伝ったりした日には、

「私の仕事のやり方、そんなにダメですか?」とか言われるし。

とにかく気難しい。


そんなことをぼんやり考えながら歩いてたら、

あっという間に家に着いていた。

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