第11話 斗真の妄想

僕はあの日から作戦を考えていた。


あのひとにスーパーで会った場合、

それから自転車で見かけた場合。


それぞれ変な奴と思われず、ごくごく自然に話しかけられるシチュエーションを考えていた。


それも結構大真面目に。


僕がこんなに欲深い人間だったなんて、自分でも驚きだ。


珍しいものを見たかった。

見るだけで良かったんだけど、あわよくばどんな人なのか話してみたくなった。


どうせ僕のことだから、話しかけるなんてできるわけないのに。

でもどうしてか考えずにはいられなかった。


スーパーで会えたら…

会えたら…。

無理だ。

客としてあっちが困っていない限り、店員から話しかける場面なんてない。

今までだって、おじいちゃん、おばあちゃん達相手に僕から話しかけなければならないときなんて無かった。


はぁ。

じゃ、じゃ、じゃぁさ、この前みたいに犬の散歩中発見した場合は?


僕は自転車だよね。

追い抜きざまに挨拶でもする?

でもそれって相手からしたら怖いよね。

何かないの!?

…。

あ!犬!犬を話題に話しかけるのはいんじゃない?

発見したらすぐに自転車降りてさ。


ゆっくり歩いて近づいたりしてさ。

自転車に乗ったままだと不審者じゃん?

見つけたら自転車から降りたら自然な感じで行けそうだよね。


セリフは何がいいかな。


「こんにちは。ワンちゃん可愛いですね。」とか?


うん、こんな感じなら変態ぽくない。

それに僕、本当に犬好きだし。


妄想が止まらない。

僕は僕のことが不思議でたまらない。

何で男相手にこんなにも必死になってるのか、

僕にもさっぱりわからない。

でも仕方がない。

だって、気になって仕方がないんだから。

僕は変態なのかな。

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