第7話 秋斗の転勤
俺の仕事はお菓子製造の下請け工場の営業だ。
CMを流しているような大手の自社生産を行っているようなところに営業に行って、仕事を受注するため日々営業活動をしていた。
入社してすぐ東京本社の営業部に配属されて4年が過ぎた頃、上司に呼ばれた。
最近はそこそこ成績も良かったし、優秀社員として表彰も受けたばかりだ。
こんな時期に個人の呼び出しなんて、一体何だろう。
「失礼します。」
「おう、悪いな。忙しい時間に。
早速本題に入るが、お前、そろそろ次のステップに進む気はあるか?」
「次のステップですか…?」
「はっきり言おう。営業部長になる気はあるか?ってことだ。」
俺はそんなふうに上司から評価を受けていることに驚いた。
「いずれはもっと収入もあげたいですし、上に行きたいとは思っています。」
「なら話は早い。役員からの評価も高いし、取り引き先からの評価も高い。お前なら、30代で部長職に就けるだけの力はあると思ってる。ただ、営業部長ともなると、もう少し広い視野で会社全体を知る必要がある。一度本社を離れて、工場の生産管理部門に行って勉強してきてほしい。期間は1年。返事は週明けでいい。考えてみてもらえるか?」
この会社の工場は千葉、埼玉、群馬に一つずつある。
「あの、すみません。私はどこの県に…」
「あぁ、すまん。肝心な事を。埼玉だ。」
「何だか埼玉って聞くと、東京から近いですし、何となく土地勘は無くても馴染めそうな気がします。」
「ははっ。そうだな。埼玉じゃ近いよな。役員達が、取り引き先で何かあったとき、すぐに動けるようにってことで、埼玉を選んだそうだ。それに月1回は報告を兼ねてこっちにも顔を出してもらう予定だ。」
「承知しました。では、1週間よく考えたうえでお返事させて頂きます。」
「よろしくな。これはまだ公にしてない案件だから、そこのところもよろしく頼む。話は以上だ。仕事に戻ってくれ。」
「はい、では失礼します。」
突然のことで思考がうまく働かない。
とりあえず、今日の仕事を片付けるか。
考えるのは帰ってからにしよう。
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