第12話別れ
「はぁー今日も、帰りが遅い・・・・・・」ここ数日。モネの帰りが
遅い。理由ははっきりしている。きっと、会社の後輩の子と一緒にいるはず。
モネの会社は滅多な事じゃ残業はないはず。私の所もそうだし。
定時には帰れるから、おそらく会社にはいない。だとすると、会社の
同僚とどこかで飲んでいる可能性もあるけど。その可能性も低いと
思っている。モネが積極的に飲み会に参加するとは思えない。
私がそうだから。つまりこの可能性も低いだろう。残る可能性は
誰かと一緒にいる。誰かとは恋人を指している。男ができた?
いや、それはない。学生の頃に付き合っていた。元彼の事を
引きずているに違いない。そもそも、もし新しい恋をしたいなら。
私に聞くと思うから。男の可能性は排除するとしたら。「男じゃ
ないなら。女かも・・・・・・」モネは、同性の恋人がいるに違いない。
おそらく新恋人は、会社の後輩の子だと思う。それは、モネからの
一ヶ月前のLINEのメッセージを見ればわかる。「ごめん。今日、後輩の
話に付き合う事になったから。帰るの遅くなるかも」このメッセージを見て
私は確信した。モネの新恋人は会社の後輩だ。私は、自分がいた世界での
会社の事を考えていた。「えぇ~と~たしかー名前は・・・・・・江崎アリス
だったけ?」江崎アリス。それが、モネの恋人の名前だ。こっちに
モネがいるなら。私のいた所にもここと同じ人がいるはず。私は、自分がいた。
世界の会社に江崎アリスの名前の後輩がいる事に気がつく。私の所の
彼女は人懐こい子で、誰とも笑顔で接する子だけど。私は、正直
この子の事が苦手だ。何だか、裏の顔があるのではないかと思ってしまう。
いや、それは私の思い込みで実際はそんなんじゃない子とだと、心の
どこかでは分かっているはずなのに。私は、どうも江崎アリスの事を
ずっと苦手な意識が拭えないでいる。でも、こっちのモネは違うのかも
こっちの私は彼女の裏表ない自然な笑顔に、心を惹かれたのかもしれない。
私は、それに怒りを感じていた。「だったら、ずっと一緒にいよう
なんて。言わなければいよかったのに・・・・・・」モネに対しての
怒りが込み上がてきた。自分勝手とはわかっているのに、自分でも
この怒りを止めれる事はできないであろう。「ただいまー」モネが
帰ってきた。「ごめんね。帰るの遅くなちゃって」帰るのを遅くなった事を
謝るモネに。私は「ううん。別に」と素っ気なく答える。「いやー最近さぁ
残業が多くて。なかなか定時に上がれないだよねぇ」帰りが遅い理由を
私に言う。それを聞いた。私は「嘘だよね」「えっ⁉」「残業なんて、嘘
でしょう?」よせばいいのに、モネに冷たく言葉を吐く。「本当は、新しく
できた。恋人といたんでしょう」「いや、何言ってるの?恋人なんて、
いないけど?」明らかに焦っている。モネを見て、私は確信した。
「彼氏と別れてから。しばらくは恋はいいかなぁ~って思っているし」
モネが必死に弁解するけど。「男はよくても。女の子とは別だよね?」
「はぁ?」「恋人は、男じゃなくて。女の子でしょ?会社の後輩の」
「何を言ってるの?」もう、私の怒りを自分で止める事はできない。
「江崎アリスとできてるでしょう?」「はぁ、何を言ってるの?」
「だから、帰るのが遅いでしょ?彼女と愛し合っているから?」
「何、それ?江崎さんは、会社の後輩で、彼女とはそんな関係じゃなくて」
「一ヶ月前に、後輩の子が話があるから。帰るの遅くなる。そう、LINEで
言ってたよね」「うん。そうだけど」「その時に、江崎さんに告白されたんじゃ
ないの?『先輩の事が好きです』って」かなり強い言葉を吐いた。
「なにそれ」「それはこっちのセリフだから」「はぁ?」モネも
段々と興奮してきた。「そうなら。そうって言ってほしいよ」
「だから、江崎さんとは何でも・・・・・・」言葉を詰まらせる。
モネに、私はさらに怒りをモネにぶつける。「結局、同一人物と
付き合う事自体が間違っているのかもね」「なにそれ?」
「他人に傷つきたくないから。自分がもう一人いれば。もう一人の自分を
好きになるのに、その考えが間違っていた。だって、こんなに傷つくだもん。
自分自身にも・・・・・・」「モネ・・・・・・」涙が出てきた。
自分では抑えられない程。大量の涙が溢れ出てきた。
「ごめん。自分勝手に、怒りをぶつけちゃって」泣きながら
モネに謝る。自分勝手に、もう一人の自分に怒りをぶつけて。
言いたい事を言うだけ言って、それで言い終えたら。今度は
泣き出して。このままじゃモネをさらに傷つけてしまう。
私は、モネに「さよなら。モネ」と言い。玄関めがけ走った。
「モネ!」モネが、止めようと。私の名前を大声で呼ぶけど。
私の歩みは止まらなかった。そして、私は家を出た。
マンション一階まで降りて、外に出る。真っ暗な夜空にキラキラと輝く
星を見つめる。もう、そこには私の姿は無かった。続く
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